24. 秘密のデート

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◇◇◇ 「すっごくみんな楽しそうね!」 「確かに賑やかですね」 空が薄暗くなってきた頃、私とロイドはバラ園に移動してこのお祭りのメインとも言える部分に参加していた。 色鮮やかなバラが咲き誇るバラ園の中、一部が広場のように開けた場になっていて、その中心で人々が音楽と歌に合わせて踊っている。 貴族の舞踏会のような優雅なダンスではなく、手を取り合って自由にステップを踏むような完全な創作ダンスだ。 そのダンスを楽しむ人々を囲むように、場の外側にいる人たちは地面に座って食事やお酒を楽しんでいる。 私とロイドも他の人に倣って、比較的綺麗な場所を選んで地面に座り込み、出店で購入したお酒を飲んでいた。 このお酒にもバラのエキスが入っているそうで、ほんのりと花の香りが漂う。 「ねぇ、ルイズ。せっかくだから一曲踊ってみない?」 これまで踊る人を眺めていた私は、ふいに聞いたことのある歌が耳に飛び込んできて、思い切ってロイドに誘いかけた。 たぶんリズベルト王国で王宮を抜け出していた頃に城下町で耳にしたことのある歌だ。 「聞いたことがない曲なので、私は振り付けを知りませんよ?」 「大丈夫よ。だって特に決まった振り付けはないのだもの。みんな自由にステップを踏んでいるだけよ?」 「そういうことでしたら、やってみましょうか」 断られるかなと思ったけど、ロイドは頷いてくれて、私たちは自然とさっきみたいに手を繋ぎ、踊っている人たちの輪の中に入っていく。 手を繋いだまま向かい合って、歌と音楽に合わせて自由にステップを踏んだ。 でたらめなステップで、優雅さや美しさなんて皆無だったけど、楽しくて楽しくて、心の底から笑顔が弾ける。 特に今日はベールを付けていないから、お互いの顔を見ながら踊れるのがすごく嬉しかった。 ロイドの口元にも笑みが浮かんでいる。  ……ああ、すっごく楽しい! 本当に今日来て良かった。これから何があってもこの思い出を胸に頑張っていけそうな気がするわ。 エドワード殿下と結婚して王太子妃となり、愛されることのないお飾り妃として生きていくことに対してこれまで何の感慨もなかった。 嫌だとか、悔しいとかを思うこともなく、淡々と受け入れていた。 だけど、ロイドへの想いへ気付いてしまったら、欲が湧いてきて、このまま王太子妃となるのが嫌だという想いを初めて感じた。 好きな人の近くにいたい、叶うならば好きな人に愛されてみたい……そんな想いに駆られるのだ。 好きな人が心にいるのに、好きでもない人と結婚するというのは思った以上に堪えることのようだ。 だからこそ、今日の楽しい思い出があれば支えになる気がした。
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