お見舞い

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お見舞い

 せっかく皇宮に来ているのだからと、第一王子のお見舞いに行く事になった。  外の楽しげな雰囲気とは隔絶され、静まり返った皇宮の一室に第一王子の部屋があった。  扉の前にはやはり騎士が立ち、侵入を拒んでいる様だったけど、グランを見ると礼を取り中に僕達の訪問を告げた。 「どうぞお入りください」  扉の先には大きな天蓋のあるベッドに枯れ木の様な顔色、そして体の第一王子が横たわっていた。  カーテンは閉められ、暗い中になんで居るのかと疑問な顔をすると、グランが日差しが当たると赤くなって痛むのだと教えてくれた。  ん? それってアレルギー に似てない? 「兄上、私の妻と子をお見せしに来ました。  お加減はいかがですか?」  ベッドから起き上がり、微笑む姿は高貴な品を備えていた。 「大丈夫だ」 「初めまして、ご挨拶が遅くなり申し訳ありません。  エルモア・シアン・ド・ラキュー、魔法伯爵を賜りました。  こちらは息子のリュシアンです」 「おお、其方がエルモアか。  ラグランジュは幸せ者だな。  甥っ子もなんて可愛い、良い子を生んだな、ありがとう」 「いえ、とんでもない!」 「でしょ?  私のシアンは可愛し綺麗だし、息子のリュシアンは目に入れても痛くないくらい可愛いのですよ」  努めて明るく振る舞うグランには悪いけど、本題に入らせてもらった。  第一王子の体力的な部分が気になったからだ。 「第一王子殿下、」 「エルモア、私はテオドアお兄様と」  んん、、え? 「……、テオドアお兄様の症状を教えていただけないでしょうか。  呪詛と聞いています、なにか対策が出来ないかと」 「そうだな、まずはこの日差しが当たると痛みと痒み、そして赤くなる。  日焼けとは違うのだ、治らず繰り返している  治癒魔法で治療しても、繰り返している。  そして、寝ていると誰かに首を絞められるのだ。  だが、誰もいない。  眠ると現れるから、眠りたくない」  首を絞められる、は本当に呪詛かもしれないけど、日差しは多分アレルギー じゃないかと思われた。  食べ物に含まれる物質が蓄積されて起こる事がある。  柑橘系に含まれるモノが悪さをするから、摂取を控えて予防するしかない。  この世界に抗ヒスタミンやステロイドなんかは無いし、僕も作ったりは出来ないし。 「テオドアお兄様、食事で柑橘系の物を口にする機会は多いですか?」 「毎日、毎食、搾りたてのフレッシュジュースを飲んでいる」  それかも。   「シアン、何か分かったの?」  グランが僕と第一王子の会話を気にした。 「日差しの方の症状は改善出来るかもしれませんよ、テオドアお兄様」 「本当か?!」 「はい、まずは一度治癒魔法を掛けますから」  第一王子を金色の光が包み込み、一番強く光ったのは胃から腸だった。  まだ消化しきれずに、残っていたジュースに反応したのかもしれない。 「おお、これが、金色の魔法使いの治癒なのか」 「これで、今は治りましたが、このままだと繰り返しますから、これからは柑橘系の食物を摂らない様にして下さい。  これは日差しに含まれる物に、柑橘系が持つ成分が反応してアレルギー を引き起こしてるのです。  アレルギー は突然でますから、多分、呪詛だと思われたのでしょう。   眠ると首を絞められるは、誰かに夜ついていて貰ってますか?」  ここまで一気に話すと、第一王子もグランも呆気に取られていた。
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