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解呪
首を絞められる、については本当に呪詛かも? とは思った。
「シアン、兄上のこれは、あれるぎー、と言うの?」
アレルギー って言葉は無かったか。
「はい、沢山のアレルギー があって、人それぞれ異なります。
多く見られるのは穀物や乳製品、卵なんかに対するアレルギー だったり、ですね」
もう一度、第一王子に体力を回復させる回復魔法をかけて、枯れ木の様な体と顔色をどうにかした。
「エルモアはやはり凄いな。
知識も、私が知る事なんぞ、ほんの一部なんだな」
グランとドローズ殿下によく似た顔立ちに、人懐こい性格が可愛く思えた。
「解呪方法を探して動いてる三の兄上に連絡を、それにドローズ兄上の出立を急いで停めて来ます!」
グランが騎士に指示を出し、第二王子の元へ走らせ、魔法で一番早い魔法鳥の中でも皇族だけが使用する鷹を模したものを第三王子の元へ飛ばした。
「シアン! ありがとう!
本当に君は素晴らしいよ!」
「エルモア、私もシアンと呼んで良いだろうか?」
「ダメです!
シアンは、私だけのですから、兄上はエルモアで!」
びっくりした表情の後、第一王子は大笑いした。
「あはははは!!
いや、久しぶりにこんなに大声を上げて笑えた!!
ラグランジュが駄々っ子になるなんて!」
僕の肩に抱きついて、第一王子に向かって威嚇する姿は正しく、大型犬だった。
「グランってば、リュシアンの事も陛下がリュリュって呼ぶと怒るし、そんなに呼び名に拘り過ぎでしょ」
「私だけってところが重要なんだから、ダメでーす」
「あーよいよい、ならば、エル、これから私の食事を管理してもらえないだろうか」
第一王子は僕をエルと呼んだその瞬間、グランがエルモアで!と大きな声を出した。
「シアンはお前だけが呼べる名なのだろ?
私達もエルモアでは長いし、エルだと呼びやすいではないか、それとも渡井だけが呼ぶ名前をつけるか」
第一王子は仕返しとばかりにニヤニヤ笑いながら言うと、グランは渋々承諾した。
「もう、グランったら」
「子供だな、ラグランジュは末っ子の狡賢さもあるから、気を付けない」
兄弟は分ってるよね。
本人は僕に隠したがっているみたいだけど。
「テオドアお兄様、先ほどのお話しですが、最初のうちは献立などは見ましょう。
そのうち、料理をする人も慣れて来ますし、このまま改善出来れば食事内容は問題無くなります。
問題なのは、首を絞められる方です。
先ほども聞きましたけど、こんな状況なら護衛を付けられて就寝されてると思いますが、その方はなんておっしゃってるんですか?」
一人でこの状態にさせておくはずが無いと思う。
オカルトでも、何も検証せずに呪術だとか呪詛だって話にはならないだろうけど。
「あぁ、侍従が夜番をしてくれている」
この部屋に何か媒介になるモノがあるとか?
「部屋を変えてみましたか?」
「そこまではしたことが無かった」
「ではまず部屋を変えて見ましょう。
その間、この部屋の調度品から何から何まで、全て新しくしましょう。
もしかしたらその呪術の媒介になる何かがあるかもしれませんし」
そこまで僕の考えを言うと、グランが新しい第一王子の部屋にも扉を設置して欲しいと頼んできた。
「もちろん、扉を設置するよ」
何かあれば、いつでも駆け付けられるように。
取り敢えずこの部屋にあるかもしれない呪詛を解呪してみようと、かなりしっかりしたイメージで解呪を行った。
有名な霊能力者愛子先生のイメージで。
すると目に見えると言うわけじゃないけど、まるで頭の中の靄が晴れるみたいに、部屋の空気が変わった気がした。
そして、第一王子の枕のカバーがビリっと破けた。
え、あ、もしかして? 本当に呪詛だった?
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