見つけちゃった?

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見つけちゃった?

「これは、一体」  破けた枕カバーの内側に、びっしりと呪いの様な縫取りがあった。  表面が刺繍されていたせいで、糸の凸凹感では気づけない要に、裏側に文字が刺繍されていた。 『ラグランジュ様ラグランジュ様ラグランジュ様ラグランジュ様ラグランジュ様ラグランジュ様ラグランジュ様ラグランジュ様ラグランジュ様ラグランジュ様……』 「ナニコレ、怖い」  三人ともがガクブルした。  ちなみに僕が抱っこしてる、リュシアンもうわぁって顔をしていた。 「この枕カバーってどういう経緯で?」  裏の縫取りがグランの名前で埋め尽くされてるとか、怖すぎるんだけど。 「何年か前、父上の誕生祭で献上された布を枕カバーに仕立てたんだ。  この端にある刺繍は覚えがある。  その時はこの刺繍が趣味じゃなくて、確かドローズ兄上の人形の敷物にでもって、侍従に下げさせてその後は知らない」 「下げさせた侍従は? 覚えてる?」 「今は一の兄上の侍従になってる」  侍従が? グランの名前をビッシリ入れて第一王子に渡すだろうか? 「もしかしたら、誤ってテオドア兄様の手に渡ってしまったんじゃないかと。  テオドア兄様は何故この枕カバーを使っていたのですか?  こんなに刺繍があったら寝る時気持ち悪いと思うんですが」  僕ならサラッとした物がいいけど。 「意外と厚手だなぁ、とは思っていたんだが、布の質自体は良かったからそのまま使用していた。  それに用意してもらった物に文句はないし、そこまで使う物に拘った事もなかったからね」  グランと違って、まったく気にしないタイプというかおおらかと言うか、無頓着すぎると言うか、まぁ、結局のところお坊ちゃまだからさ、って事だ。  「呪詛も関係してるだろうけど、魔法の痕跡がないか探りますね」  さっきの解呪と同じ様にイメージした。  愛子先生からの中二病的、凄い魔法で索敵してるっぽく。    金色の魔力が部屋中を満たすと細い紐の様になって、スーッと動き始めた。  意志を持っているかの様に、部屋の壁に沿って行くと、木の腰壁の一箇所を光で示した。 「あそこに何かあるみたいです」  グランが光が作った部分を探ろうと動くと、光は更にその壁の向こうへと入り込んだ。 「まさか隠し扉なのか!?」  僕も第一王子も急いで扉前にいる騎士に、大きな声で入ってくる様に言うと、何事かを察した騎士が剣を抜いた状態で入って来た。 「ご無事ですか!? 殿下!」  さすが、皇宮の騎士だって思ったのは、まず自分の体で第一王子の盾になってそれから警戒をした。   「あの光を追って行ってもらえるか?」  僕の体から出ている金色の光が紐状で繋がっていた。 「はっ!」  腰壁をグランが触って確かめていると、カチッと何かが外れて人が屈んでやっと通れるくらいのサイズの入り口が出来た。 「こんな皇宮に隠し通路があったのか?  しかも、最近出入りした痕跡がある」  狭いのは入り口部分だけでその先は人が一人通れる程の高さと幅が維持されていて、僕の光の紐が通路をほの明るくしているので、その先に階段が下に向かっているのが分かった。 「我らが向かいますので、殿下たちはこちらでお待ちを」  騎士たちが入って行こうとしたけど、僕は狭すぎて逃げ場がないのが気になった。 「待って下さい、先に僕の魔法で中を見た方が良いと思います。  皆さんが入って行って、もし敵が待ち構えていたら逃げ場も剣を奮うことも出来ません」  騎士もそう言われてでは、と一旦行くのを控えてくれたので、その間にひも状の光の先端を胃カメラみたいにしてこちらの壁に投影した。  前に魔法石を通して映像にした魔法の応用というか、簡易版って感じでどんどん痕跡を追って行った。  
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