お預け

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お預け

「今日は一日大変だったけど、まだ数日は気が抜けないな」 「うん、枕は確かに呪詛みたいだったけど、首絞められてるのに、起きないものかなぁ」  グランも考え込むようにしてから、薬を使われてるんじゃ無いかって言い出した。  今回の犯人を捕らえても尻尾を切り離すだけだろうし、執事長や騎士団長が関わっているのなら、余程立場が上じゃないと難しいだろうし、そうなると考えたく無い人物が浮かび上がって来た。 「どうした? シアン」 「ん、怖い発想になっちゃって」 「ちゅ」  ん!?  「キスして、シアン。  私も同じとこに考えが辿り着いてるから」 「ん、怖い?  そうだよね、多分、皇太后様しか出来ない事だもん」  皇帝陛下の母親は今でも健在なはず。  ただ、皇妃様が第一王子を産んだ時に皇室から退いたと聞いている。  それを知ったのはつい最近だけど。  グランと結婚しなかったら、気にすることも知る機会も無かっただろうけど。  それに僕が生まれる前だもん、知るはずもないさ。 「皇太后様は、母上を嫌っているからね  最後まで反対されていたそうだ。  この国の侯爵家の娘より、公国の王太子を娶らせる事に躍起になっていたそうだ」 「公国の?」 「その絡みが今でも続いているみたいなもんだな。  一の兄上が誕生した時に、その身を一線から退くことで廃位を免れたはずなんだ」 「じゃぁ、皇太后と言う地位はあるけど、政的に影響力はないって事?」 「ああ、うちは基本恋愛結婚を推してるから、公国の王太子なんてあり得ない話だったそうだ。  なのに、一夫多妻制を良い事に入り込もうとしてたんだ」  三十年以上に渡っての確執が、今更? いや、今だからか。  僕が引鉄になった気がする。  グランと結婚したのが男で、しかもこの前まで爵位も無かった平民だ。 「シアン、自分の事が原因とか思ってるでしょ?  違うからね。  私たちは王子としての婚姻を求められた事は一度もないからね。  一の兄上だって恋愛対象は男性だし、二の兄上なんて、お話の中の子が恋愛対象なんだから」  それは、二次元オタクでは。 「グラン、僕は貴方を幸せにしてあげたい」 「私はシアンと私たちの子供、それに家族って単位が大きくなるのが嬉しくて幸せだよ」  甘い時間に心も体も震えた。  抱きしめてくれて、キスをしながら大人の行為に発展しそうな時だった。 「ん、扉が開かれた!」  またかよー! 自分で感知して、自分で言っちゃったら止めるしかないじゃん!! 「ふぅー、またか、もう、頭きた」  グランがはっきりと言葉に出すほど怒りを露わにした。 「グ、グラン?」 「私ね、シアンを初めて見て、一目惚れからのやっと結婚で、本当に婚前交渉に抵抗なんか全く無かったし、シアンが引け目を感じなくなるまでいくらでも待てるけど、これだけ邪魔をされると、さすがにね」  う、うん、僕も、とは言えず、取り敢えず今は地下牢に行こうと宥めるしか無かった。
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