伏兵は

1/1
前へ
/41ページ
次へ

伏兵は

 いやぁ、失敗した。  披露宴から三日ほどバタついてたから、グランと行動がバラバラで朝顔を合わせる事があるか無いかくらい、すれ違いの生活だった。  僕の方の両親にリュシアンを預けていたらグランは拗ねるし、中身二十代のはずのリュシアンも拗ねていた。 「リュシアン、おばあちゃんたちと楽しく遊んだんじゃ、ってそっか、中身はどうであれ外見は三ヶ月の赤ん坊だもんね」  あははと乾いた笑いを出すと、うーうーと可愛い怒りをぶつけて来た。 「ごめんごめんって、寂しかったの?」 「う」 「猫可愛がりするような両親じゃないから、リュシアンには良かったんじゃないの?  孫にはちがうのかな?」  喋れたら凄い事言いだしそうな表情で、不満を訴えていた。  そこへ丁度帰宅したグランが、ただいまのキスをしながらリュシアンを僕から受け取って抱き上げた。 「シアン、リュシアンが拗ねる気持ち、私も分かるぞ」 「グラン、カッコいい顔が台無しだよ。  ねー、リュシアンもそう思うよね」 「う」  鼻息荒く、態と面白く変顔をして見せながら、リュシアンを高く抱き上げて寂しい同盟だ、とバカな事を言って二人は笑っていた。 「やっと一緒に抱き合えるのを邪魔されてなるものか」  あー、グラン、その言葉の意味をリュシアンは理解してるからあんまり言わないで欲しい。  赤面しているとリュシアンと目が合って、親指を立てられた気がした。  ちっちゃくて、握るくらいしか動かせないのに、なんか必死に豆粒の様な指を動かしていた。 「リュシアンは父様の味方だよなー」 「う!」  同盟出来上がってるわ。 「と、取り敢えず食事して、ゆっくりしよ、ね?」  本当、何日振りの親子水入らずだろう。 「リュシアンはまだ食べられないんだよなぁ」 「うーん、果汁を薄めたのとかだねー」 「早く一緒にご飯を食べたいねー!  母様のご飯は世界一美味しいんだよ!」 「う、あ、うぁあん」  食べたい欲求でリュシアンが泣き出してしまった。  だって前世とかで食べた記憶はそのままあるだろうし、僕もそうだったからねー。 「リュシアン、ぽんぽん痛くなって恥ずかしい思いをしたくないだろ?」 「う、」  中身が大人ならこれが一番効くだろう。 「う」 「ん、いい子」  おでこにチュッとすると、グランまでが、ん、とおでこを出すし。  チュッとグランにもして、食事を始めた。  一家団欒、まさにその言葉通りの時間だった。  グランがお風呂に行ってる間に、リュシアンにミルクを飲ませながら、この世界の常識である男女比率や、男性でありながら僕の様に子供が産めるタイプがいる事を教えた。 「う! う!」 「リュシアンにとってはいい世界? 悪い世界?」 「う!」  腕を突き上げると、力一杯肯定しているみたいだった。 「いい世界なんだね。  僕は、厳しい世界だなって思った時期が長かったから、なんて言うか資質がどこに行っても大事なんだって思ったよ」 「う、う、」 「リュシアンが転生者で安心な反面、恥ずかしいな。  それこそ厨二病な世界だし、その中でもチートだしね」 「うーう、う!」 「それにさ、今更だけど。   ベビーベッド は同じ寝室にあるし、その、さ。  公開エッチはしたくないから、さ」  ただの子供ならまだしも、中身大人でゲイだし!  グランは分かってないから、もう、リュシアンが寝ればやる気満々だろうけど。  生配信はしたくないよー!!  しかも見る側じゃなく、出る側はちょっと。  とグダグダと考えていたら、腰タオル! でグランが部屋に入って来た。 「シアン、リュシアンはどう?  そろそろオネムかなぁ」 「あ、まだ、かな」  ドキドキして、まともにグランを見ることが出来ない。  リュシアンはニヤついてるし! 「ミルクは飲んだ?」 「あ、全部」 「そう、ならもう、オネムだね」  え? いや、この子めっちゃ起きとく気満々だけど!? 「リュシアン、眠りなさい」 「う、ん、すー」  グランは魔法でリュシアンを眠らせた。 
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

104人が本棚に入れています
本棚に追加