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第三王子
グランが見つけた封筒は、皇室の紋章が入った封蝋が使われていて、もしやとしか思えなかった。
でも、先触れを出してこないと思っていたから、心構えが出来ると言うものだし、そんなことを思っていたら内容は全く違ったものだった。
「シアン、三の兄上が来られる」
「第三王子は、テオドア兄様の為に旅をしておられ方でしょ?」
「ああ、急ぎの書簡は届いていたようだ」
グランの表情は嬉しそうに訪問される第三王子を想っているのが分かった。
「グランは第三王子が一番仲良いの?」
「歳が近いからね。
一の兄上は私と十離れてるし、二の兄上はは年子でやっぱり九歳はなれてて、三の兄上が私と三つ違いなんだ」
「皇宮のあのお庭を走り回ってるグランを想像出来るね。
第三王子はいつ来るの?」
「明後日だな」
「明後日ね」
「これには、鷹を受け取ってすぐ立つって、三日後には着くってさ
うん?
あれ?
あれ~!?」
「どうしたの!」
「あ、いや、多分もうすぐ来る、ははは」
「えー!?」
手紙を受け取ったのは今日だけど出してから、届いてたのは三日前?
僕らは奔走して三日ほど家でやる事なんかは後回しにしてた。
「確かに、鷹を出したのは披露宴があったあの日、一の兄上のとこで出したし。
三日後なら今日? かな」
「あははは」
笑うしかなかった。
「まあ、来たら来た時だよ。
面白い兄上だから、そんなに気にする必要ないよ」
シアンはそう言うけど。
僕は急いで掃除を始め、シェフには第三王子が来るから食事をフルコースでお願いしたり、かなりバタついていた。
「リュシアン、叔父さん来るよー」
「う、?」
リュシアンは体の動かし方に慣れたのか、首を若干、傾げる仕草をする様になっていた。
僕がバタバタと動き回るのを二人でソファに座りながら、母様はバタバタしてるねー、と言っているのを聞くと、ちょっと! って思って顔を向けると、ニヤニヤと二人して笑いながら、魔法使わないの?って言われた。
「あ、」
「ふふふ、シアンの良いところだけど、魔法を使っちゃいけないわけじゃ無いんだよ?」
「ん、クセだね。
元々、魔力が無いと思ってたし、魔道具すら使えなかったから、自分で体を動かす事が当たり前だったんだ」
「そうだったね。
シアンが掃除したりするの好きだから全然気にならなかったけど、さすがに今は使っても良いんじゃ無い?」
「うー、う、う」
リュシアンもそうだと言ってるようだった。
「いくよ」
歌を歌うと鳥とか、森の動物とかが助けてくれる、って訳じゃなく普通にリネンやらがかなりのスピードで洗われたり、乾燥されてクローゼットに入って行ったり、服を着替えると言うより、いきなりポン!っといった感じで違う服を着ていた。
グランも自分で服を変えて、リュシアンは男の子らしいロンパースを着て、あうあうと体を動かしていた。
ドアのノッカーが鳴らされた。
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