魔力循環

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魔力循環

「シアン、リュリュたん、ごめんなさいね。  小さい頃から思い込みが激しくて、こうやって失敗しないと止まらないのよ。  でも今回の失敗は、許せませんからこのまま自分が出した言葉の重さが分かるまで、ネズミのままでいいわ。  静かで助かるし」  皇妃様は自分の息子がハムスターになってる事に、大した事じゃないように流していた。 「これ、エルがしたの?」  テオドア第一王子が、ハムスターに変わってる事が有り得ないと気づいてくれた。  気づかなくても良かったんだけど。 「はい、リュシアンの魔力と合わせて、ハムスターに変えたのはリュシアンだと思います」 「え!?」  三人共が一斉に声を上げた。 「リュリュたん、もう、魔法を?  え? だって赤ちゃんの体じゃ魔力を暴走させて、命の危険だってあるんだぞ!?」 「テオドア、急いで魔法管理部のギルバルディを召喚しなさい!  リュリュたんの体を診てもらわねば」 「はい! 父上!」  あ、そうか、リュシアンが転生者でも、体は赤ちゃんなんだから、ちゃんと診てもらわないといけないんだ。 「リュシアン、ちゃんと、リュシアン?  リュシアン!!」  さっきまで泣いていたリュシアンが息を荒くして、ぐったりしていた。 「やだ、リュシアン!  ごめんね、気づかなくて!」  回復魔法をかけても全然効き目がなく、体が熱を帯びて行く。 「シアン、落ち着いて!  大丈夫だから、私が絶対守るから!」 「グラン、どうしよう、リュシアンが!」  このままリュシアンに何かあったらどうしよう、怖い、怖い、怖い! 「エル、ギルバルディがゲートを開いて来てくれたから大丈夫だ。  医者もいる」  うちの扉がゲートなのをすっかり忘れていて、ギルバルディにゲートを開かせてしまった。  数人の魔法使いと次席のカサルがお医者様を連れて来てくれていた。 「ギルバルディ様!  リュシアンが!」 「エルモア、落ち着きなさい。  先生、診てあげてください」  リュシアンの小さな手を取り、以前僕が診察を受けた時の様に魔法で体内を探っている様だった。 「ほぅ、すばらしい子だ。  魔力が循環するのに、赤ん坊の体を補う為に無意識に循環スピードを抑えている様だ。  その為に、発熱してしまったんだね。  遅過ぎるんだ、循環するのに、バイパスを作ってあげたいのだけど、お父様かお母様の体を通すのが一番良いのだけど」 「私の体を使ってください!」  グランの体を一度巡らす事で循環する距離が出来て、リュシアンの体を流す魔力のスピードが調整されると言う事だった。  まるで輸血とか透析みたいだと思うと、血がつながらないグランとでは問題があるのでは無いだろうか? 「家族が一番だから、お父様の体なら安心ですね。  他人でも出来なくは無いけど、かなりの苦痛を伴いますから」  先生は何も知らずに、そんな事を言った。
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