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何事かと思えば一台の車が曲がり角の右折に失敗して歩道に入っていた。
その車との距離はもう二メートルもない。このままじゃ私達は車に引かれて即あの世行きだ。
そんなの、いやだよ。最後ぐらい…………私に助けさせてよ。
私は切夜にまだ何も返せてないから。
私は切夜の前に行こうとするその時だった。
ズゴゴ、キキー!
車はそういう奇妙な音をたてて、切夜の体を轢いて私の前で止まった。
「切夜!」
私はすぐさま倒れている切夜の元へかけよる。
「切夜!切夜!」
私は切夜の体を揺すって意識を覚まさせようとする。
その時、ポツポツと雨が降ってきた。
その車の運転手である五十代のおじさんは驚いた顔で降りてきた。よくみると、頬は酒を飲んでいて酔っている時のように赤く染まっていた。きっと会社の飲み会の帰りなんだろう。
確かお酒で酔ったまま運転するのは法律で禁止されているはず。おじさんはそれを知らないのだろうか。
「少年、大丈夫か?ああ、おじさんはなんてことを。知っていたのに」
どうやらおじさんは切夜を轢いたのでそのおかげで酔いが覚めたらしい。安定した口調だった。
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