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二十歳の私
あれから五年後。私は二十歳になった。
高校では一年生の時に切夜とそっくりな文季瀬不矢 《ふみきせふや》に告白されて、今では交際五年目だ。こんなにすぐ切夜とは別の彼氏を作るなんて切夜に申し訳ないと思ったし、できるとは到底無理なことだと思っていた。
けれど、後悔の悲しみを償いたかったのか私はいつの間にか瀬不矢とこの五年間、付き合っていた。
どんな愛に恵まれていたって、いまだにあの後悔は心の底から消え去ることができない。いや、消し去ることなんてしたくない。
たとえ、誰もが切夜のことを忘れてしまっても私だけは絶対に忘れたりしない。そう心に誓っていた。
十八歳の時に上京することになって都会のど真ん中に住んでみるのも良いと思ったが、落ち着かなそうだったので家賃が安くて都会からちょっと外れた1LDKのマンションで一人暮らしを始めて今は二年目だ。仕事は朝から夕方まで図書館で働き、夜は家で執筆をしている。
瀬不矢ともちょうどマンションが一緒で時々デートにも行っている。
そして二十歳の誕生日の日のディナーでは、その瀬不矢に結婚を申し込まれた。
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