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私はもう一度聞いてみた。やっぱり私のことが好きだと言われることがおかしいと思ったからだ。
別にその方が深入りさせてしまうかもっていう気持ちもあったけれど、彼が私のどこに興味を持ったのかが知りたい気持ちの方が大きかった。
「そんなに知りたいかい?でも今は言いたくない。言えないから無理だよ」
言いたくない、言えない。不思議に感じさせるように彼は同じようなことを二回繰り返して私に伝えた。
言いたくないってことは今はその気分じゃないってこと。
言えないってことはただをこねてみても無理だということ。
結局知ることができないというのが共通点なのだけれど、奇妙に感じさせる。
「説奈はさ、俺のこと知ってる?」
彼は変わらず気軽な口調で聞いてくる。
私は頭の記憶の中で彼を探し始めた。だけど、彼に関する出来事は隅々まで探してみても全く見つからなかった。
「知らない」
普通はこんな私の態度を人は素っ気ないと思うのかもしれない。けれど、人見知りな私からすればそれはどうでもいい話だった。
「同じクラスで隣の席なんだけどな」
私は彼の言葉に目を見開いた。それは私が周りの目など気にしていない人だと悪口を言われたような気がしたからだ。
「ごめん」
私は気づかなかったことには悪いかった行為だと思ったので切夜に謝った。
「いいんだよ。僕だってちっぽけな存在だし」
それは切夜のことを何も知らない私を励ましてくれているように感じた。
切夜は不思議な人だ。私は改めてそう感じた。
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