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「座れよ。珈琲、淹れるから」 「ごめんなさい。珈琲はやめておく」 「…妊娠してる?いや…寝てないのか?」 最初から気になっていた里麻の目の充血。そしてメイクで隠しているようだが…隠しきれていないクマが涙袋の下にできている。 「朔、お願いだから…何も詮索しないでこれだけ預かって。絶対に迷惑は掛けない。掛かるようなことじゃないから…ちょっと保険をかけておきたいだけ」 このガンコな魅力に向き合うのは、俺のライフワークにしたい作業だと思っていた。 理想的な涙袋のせいか童顔でありながら、自分の意見を曲げない強さを持ち合わせた里麻。それがわがままに映ることもあるかもしれないが、信じたことをとことん信じ抜く強さは彼女の魅力。 「あまりにも一方的なお願いだと、難しいよな?」 自信たっぷりに見える里麻も心の中は不安を抱えている場合も多かった。甘えるのが下手、頼るのが苦手なのだ。 気が強く自信家だが、好きになった男や信頼できる人には気を許し従順な一面もある里麻が、何らかの事情があってこのUSBメモリを預ける先に俺を選んだ。信頼はされているわけだ。 「妊娠はしていない」 ひとつ吐いたか…
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