chapter~2~

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「あとは企画会議で、気持ちは半袖の気分ですよ」 そう明るく笑っておくと、お義母さんは 「今からコートの季節なのにねぇ」 と私より笑顔でウキウキを隠さずに頷いている。 「サンプルセールというのがたまにあるんですけど、今度お誘いしましょうか?」 きっとお義母さんの想像するサンプルだけでなく…と一般的には行くことのないサンプルセールについて説明する。 WEB SHOP商品ページの着用画像でモデルが着用した商品や‘カラードロップ’と言われるレア商品もある。カラードロップは、例えば緑、白、黒でTシャツを試作して緑のみ量産はやめようといったケースのこと。どのサンプルも洗濯のタグがないので一般流通はさせられないのだが、社員や関係者と家族は購入の機会がある。 「ぜひ行きたいわ。里麻ちゃんが恥ずかしくないようにお洒落して行くわね」 「母さん、サンプルセールに行くために洋服を買うの?」 賢人がわざと真顔で聞くから、お義父さんもお義母さんも私も笑う。それでも喉の一番奥がチクチクとつつかれたようで、笑い声に紛れて小さく喉を鳴らしてチクチクを追い払った。 賢人とマンションに帰る途中 「賢人の朝食のパンがないから、コンビニに寄っていい?」 「いいよ」 二人でマンションに一番近いコンビニに寄る。私が食べるライ麦パンは冷凍してあるけれど、彼はライ麦パンの酸味が苦手だ。
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