chapter~2~

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結婚式当日の朝にメッセージを送ってから、一度も連絡をせずにカフェへも行かなくなった。オープン前の朔のカフェへ立ち寄ることは、都内に通う私にとって無理なことではなかったけれど、早く出ないといけない現実はある。 はい、はい、ここで渡れと… 大人っぽいグレーのチェスターコートに柔らかい印象になる白パーカーで中和をさせるうまいコーデをした朔はクイッと道筋を示す。職場からずいぶん歩いたけれど…百貨店などが並ぶ通りに向かいそうでピンときた。 私が両手を小さく翼のようにヒラヒラさせると、朔は軽く手を上げて先を歩く。そして彼は細い路地に入ったけれど、私はそのまま真っ直ぐ進み‘les plumes(レ·プリューム)’というバーへ足を踏み入れた。 「いらっしゃい…って、里麻ちゃん?」 「はい。ずいぶんご無沙汰してます、翼さん。表、開いてましたけどオープン前ですか?」 「もう開けるからいいんだよ、掛けて。今、翠が裏のインターホンで…あっ、戻って来たね。朔は裏からってワケあり?」 「こんばんは、翼さん。里麻が暴走してるんで尋問しようと思って」 このles plumesは翼さん、翠さんという大人な男性二人が経営するバーで、元々朔が常連だったことプラス、カフェオープンに向けてアドバイスをもらっていた。私も度々来ていたのだけれど、朔と別れてからは初めてだ。
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