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「里麻、立って奥。翠さん、翼さん、やっぱり奥を借ります」
朔がそう言うと、二人は適当に手を振っている。
「どうして?」
「里麻が何も話さないって顔したから。ほら、早くしろ。客が来る」
私がポンとカウンターに置いていたスマホを人質のように持った朔が奥に行くと
「里麻ちゃんもカウンターの中を通っていいから、行け」
翠さんがクイッと顎で奥を示す。翠さんと朔が似たタイプなんだよね…翼さんはもっとソフトなタイプ。翠さんと翼さんはもう長い間、公私ともにパートナーだ。
私もここで抵抗するほど子どもではない。とにかくお店に迷惑を掛けないように
「すみません、失礼します」
バッグとコートを手にカウンターの中を通らせてもらう。そして奥の部屋に足を踏み入れた途端
「俺、ずっと待ってたんだけど?」
朔が私の手からバッグとコートを取って小さなデスクに置きながらチラッと私を見た。
「結婚式ってことは新婚旅行があるかもしれないと思って2週間…だけど、さらに2週間経っても音沙汰なし。最初の様子から…マジで安否確認が必要だと思っての今日だ…なんでヤツレてる?」
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