chapter~3~

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今日もまた職場で 「岸本さん、幸せ太りですか?なんか、既婚者の貫禄が出てますね」 と後輩に言われた。体重は1キロくらいしか変わってないけど、貫禄か…悪い気はしない。 今日は午前に2台、車検のために顧客のところへ車を取りに行き、午後は車検や点検、保険更新などの時期を迎える顧客に順に電話を入れる。 4度目の車検予定のお客さんには、先日送付した新車についての反応を窺う会話をのらりくらりと繰り広げ、週末に試乗の約束を取り付けた。 そして夕方 ‘賢人と同じくらいの時間にはなりそう。ごめんね’ という里麻からのメッセージを受け取った。 きっと、ずっと定時で終わる努力をして夕食の準備をしてくれていたんだと思う。でも彼女の仕事が外に出ることが多いことも理解している。チームの人や店舗の人と食事に行きたいこともあるだろう。謝ることはないんだ、里麻。いつもお洒落な里麻も好きだから…仕事でも活躍して欲しい。 「あれ?岸本さん、どうかされました?」 「何かありました?」 今朝‘幸せ太りか’と言った後輩と尾田さんが、お客さんの見送りから戻ってスマホを手にしたままの俺に聞く。 「いや。久しぶりに飲みに行くか?」 「え、いいんですか?この前も新婚さんだからって岸本さんは不参加でしたけど」 「たまにはいいよ。別にうるさい奥さんでもないし」 こういう話はよく聞こえる奴が必ずいて、6人で居酒屋へ行くことになった。
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