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触れない方が良かったな…この感触に誘われるのはマズい。
「ん、熱はなさそうだ」
そっと引っ込めた手でグラスを持つと、静かに里麻の前に置く。
「ゆっくり飲んで」
そう伝えると、店の表に出て‘close’の木製プレートに‘本日10時~’とチョークで書き込んでから店内に戻る。
そして里麻の隣に座ると
「…どうしてここよ…?」
不満そうな声が俺の肩にぶつかった。
「気分」
「…ほんと…余裕ある大人になっちゃって」
そう呟いた里麻はすぐにストローを口にする。
「あの頃…こんな感じだったら別れてなかっ…」
「女々しいことは聞きたくない。朔はこうして自分の城を構えて成功している。それが結果よ…何も後悔する必要はないでしょ?」
彼女はドリンクの残りを一気に吸い込むと、あちら隣の椅子に置いたバッグから財布を出す。
「いらない。あれも預かる。持って来て」
俺は最初に置かれたままのUSBメモリを視線で示しながら椅子から降りると、カウンターの中へ里麻を招いた。
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