chapter~0~

5/5
前へ
/182ページ
次へ
黒のチュールロングスカートと同じく黒のミリタリースタイルのジャケットでシックな装いの里麻は、インナーにゴールドで葉柄の刺繍が施された透け素材のブラウスを選び、グラマラスにスタイリングしている。足元をローファーでカジュアルダウンするところなど、さすがのアパレル歴だと思わせる。 「ん、ここ」 俺はレジの下にある小さな引き出しを引いて開けると 「ここに入れておく。里麻が自分で入れろ」 「うん、ありがとう」 彼女は迷いなく、ハサミやペンの入った引き出しに黒いUSBメモリを入れた。 「預かる条件はひとつ」 「条件があるの?」 「理由を聞かずに預かってもらうって分かってるか?」 「…何?」 里麻が俺を半ば睨み付けるように見上げると、俺はぎゅっと彼女を抱きしめた。 「ちょ…っとっ…朔?」 「しぃーっ…黙って聞いて。条件は一日置きにこうしてここへ来ること」 「…オープン前にってこと?どうして?」 「本当は毎日と言いたいところだが、半分に譲歩する」 「だから、どうして?」 「里麻が…理由のわからない何かに一人で立ち向かうから、顔色の確認だ。おかしなものを預けられたまま、どこかで野垂れ死にされたんじゃ気味が悪い。連絡先は変わってないか?」 「…うん」 「条件は?」 「……オーケー」 「ん…むちゃすんなよ、里麻」
/182ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5958人が本棚に入れています
本棚に追加