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黒のチュールロングスカートと同じく黒のミリタリースタイルのジャケットでシックな装いの里麻は、インナーにゴールドで葉柄の刺繍が施された透け素材のブラウスを選び、グラマラスにスタイリングしている。足元をローファーでカジュアルダウンするところなど、さすがのアパレル歴だと思わせる。
「ん、ここ」
俺はレジの下にある小さな引き出しを引いて開けると
「ここに入れておく。里麻が自分で入れろ」
「うん、ありがとう」
彼女は迷いなく、ハサミやペンの入った引き出しに黒いUSBメモリを入れた。
「預かる条件はひとつ」
「条件があるの?」
「理由を聞かずに預かってもらうって分かってるか?」
「…何?」
里麻が俺を半ば睨み付けるように見上げると、俺はぎゅっと彼女を抱きしめた。
「ちょ…っとっ…朔?」
「しぃーっ…黙って聞いて。条件は一日置きにこうしてここへ来ること」
「…オープン前にってこと?どうして?」
「本当は毎日と言いたいところだが、半分に譲歩する」
「だから、どうして?」
「里麻が…理由のわからない何かに一人で立ち向かうから、顔色の確認だ。おかしなものを預けられたまま、どこかで野垂れ死にされたんじゃ気味が悪い。連絡先は変わってないか?」
「…うん」
「条件は?」
「……オーケー」
「ん…むちゃすんなよ、里麻」
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