chapter~1~

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浮気が発覚した時に、別れないでくれと懇願したのはアナタ。 予定通り結婚式と披露宴をしてくれと泣きついたのもアナタ。 別居でない人並みの結婚生活を懇望したのもアナタ。 3週間前の賢人を思い出しながら彼の理想的なEラインを見ると、彼も私を見て微笑む。私達の披露宴だもの、そうこなくっちゃ。 ちなみにEラインとは、鼻と顎を結んだ線のこと。このEラインよりも口先が内側、あるいはEライン上に収まっていると理想の横顔に近づく。賢人の場合、完璧な横顔には鼻筋からつながる眉骨が出ているといいんだけれど…横顔が立体的に見えるから。私は男性の横顔に惹かれるのだ。 しかしいくら賢人が理想的なEラインを持つ優しい男でも、許すつもりはない。浮気は私の中で許せる範囲のことではないから。 賢人の懇願には婚約破棄で世間に体裁が悪いという理由の他に、お義父さんの選挙の時期が絡んでいた。 賢人の父親は東京の隣県であるこの土地で市会議員をしている。その議員選が半年後なので息子の不品行は避けたいだろう。 「じゃあ、賢人の言う通り、この浮気について私が誰にも言わずに予定通り結婚をして、最低半年間は結婚生活を続けるとして、私のメリットは何?」 「…それは…」 「婚約破棄の慰謝料をもらうよりもメリットがないと、賢人にあまりにも都合が良すぎると思わない?」
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