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製造さんは帰っていて、今日のこの時間は輪島クンと私と店長だけだ。
「限定パンがこの時間まで残らないのは嬉しい誤算だなぁ」
私が数少なくなった商品を並び替えるのを見ながら、店長がタッチペンで頭を掻く。右手にタブレット、左手にタッチペン…店長しか使わない物だから見て見ぬふりが出来るけど…
「この時間におつまみパンとして買って帰って欲しいですよね。父の日ポップ効果はイマイチというか、普通に美味しくて売れてますから」
「焼き上げ時間を変更しようかな」
「これって父の日当日は増やす予定ですか?」
閉店20分ほど前に、輪島クンはパック飲料の補充をして、私はパンを並び替えたあと、ふたつあるレジのひとつを締めながら店長と話す。
「前日との土日は増産の予定」
「なるほど…」
と相づちを打ちながら‘あ、なる’は大学生用語なのかとふと思う。
「店長」
「何?何かいいアイデアくれるの?」
私は正社員ではないけれど、5年働くうち最初の2年は学生アルバイト。3年は正社員並の時間働くアルバイトだから、レジ締めも任されているし、試食もすればこういう話もする。
「その2日間はグラシンシートを巻くとか、ラッピングっぽく見せてプレゼントらしく演出する。グラシンシートでなくても…限定パンを購入した人で希望があれば‘Thanks’シールを袋に貼るサービスとか…子どもが買える価格のプレゼントとして、グラシンシートを巻いたものやシールの写真をポップに加えて今からアピール…します?」
「労力的にはシールが簡単ですよね」
輪島クンがそう言って冷蔵庫の扉を閉めながら私と店長を見る。
「そうだね。ちょっと資材の在庫確認してくるよ。締め、よろしく」
「はい」
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