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輪島クンに5分ほど遅れてタイムカードを押し、更衣室で着替え、裏から出ると
「メグさん…好き…今度の休み、どこか出かけよ」
彼に真っ直ぐ見下ろされる。ドキッ…と同時に
「練習?どこかって、女の子は応えにくいかもしれないね」
コミックではなく、小説から仕入れたネタでお姉さんらしくアドバイスをする。
「…ダメか」
「私、いろいろ言ってるけど…輪島クンとその子の距離感とか雰囲気がわからないから責任持てないよ?」
私がそう言うと、何か思考をリセットするかのように彼は両手を組んで大きく伸びをした。ポンポン…その手を下ろすついでに片手で私の頭のポンポンして
「具体的に誘えってことですね?」
と聞く。真面目な生徒のようだが、何しろ先生の経験値が低い。さっきの小説を思い出し
「そう…えっと…休日に何をしてるかとか趣味に乗っかって行く感じ?映画だったら‘あれ観た?’‘観てない’‘一緒に行こう’ってこと」
と具体例を挙げて
「お腹減ったね。お疲れ様でした」
今日のアドバイスはこれ以上無理だと切り上げる。そして帰ったアパートの下で
「こんばんは、木梨さん」
「…こんばん…は…?」
「驚かせてごめん。タオルを持って帰ってしまったから…」
白いコットンシャツ姿の中尾さんが小型車の助手席を開けると何かを手に取りバタン…とドアを閉めた。
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