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中尾さんが連れて来てくれたのは洋食店。うちからそう遠くはないけれど、車は必須というロケーションのお店だ。
「ここは洋食店だけど、いろいろチャレンジしていて面白いんだよ。もちろん味も俺が保証する」
そう言いながら木製ドアを開けてくれた中尾さんの前を通って店内に入ると、暖かい色の電球がうまく使われた心地よい空間に数人のお客さんがいた。もうピークは過ぎているだろう。
軽く店員さんと挨拶を交わした彼は、私にメニューを向けてくれた。
「うーん…えーっと…うーん…このハヤシライスにします」
「うーんって言うわりに決断が早いね。どうしてそれ?」
「隠し味に熟成赤味噌って書いてあるのに惹かれたから」
「いいね。俺も前に同じ理由で選んだ」
そう笑った中尾さんは、ハヤシライスと自分のハンバーグを注文する。
「乗り物が苦手だと、出掛けづらいよね。今日も歩いて帰って来たの?駅からだった?」
「歩きです。電車は仕方なく乗ることはありますけど…」
「短時間は大丈夫?」
「ううん。ダメな時は5分あれば酔うから…でも実家なんかは結構長い時間乗るんですけど、迷うとか地図見る不安とかがないので、マスクにアロマシールで耐えられます」
「慣れたところはあと何分とか分かるけど、修学旅行とかは最悪だろうね」
「そう。酔い止めのお薬を飲んでなんとか吐きはしないけど、匂いで頭痛とむかつきは避けられない…ごめんなさい、食事前に…」
「大丈夫。マスクにアロマシールっていいアイデア」
「大学生になるまで知らなくって…今ではいつも持ってます。今日って…ずっと待ってもらってました?」
キッチンからのいい香りにリラックスし始めると気になることが聞けた。
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