tre

1/27
前へ
/123ページ
次へ

tre

「おはよう。ただいま」 とにかくまたね、と輪島クンには返信した翌日、まだがら空きの電車にマスクをして乗って実家に帰った。電車の中で、琉聖さんに絶品ティラミスのお礼は送っておいた。 「おかえり、メグ」 家には母だけがいて、父と二人の兄はすでに道を挟んで広がるビニールハウスに行っている。 「炭酸水飲む?気分は悪くない?」 「飲む。大丈夫だよ」 「駅まで迎えに行くのに」 「少し歩く方が、電車がリセットされてちょうどいいの。今日、人がいないの?」 「午前中は二人、来てくれる」 「そっか。私は何から?聞いてる?」 「たぶん、出荷の方だと思うけどハウスで聞いてみて。収穫の方がいいならそれでもいいと思うし。どちらにしても来週が父の日っていうのもあって今日は忙しいわ」 「うん」 母の日や父の日に忙しいのはフラワーショップで、農家はその前が忙しい。 「じゃあ、いってきます」 「はい、いってらっしゃい。お昼は炊き込みご飯、作っておくからね」 「やった」 私は母から渡された保冷剤付きタオルを首に巻き、ドット柄の生地に細いリボンが可愛いアームカバーに手を通しながら 「おはよう、ただいま」 とメインのハウスに入って行った。
/123ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4086人が本棚に入れています
本棚に追加