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「おはよう。ただいま」
とにかくまたね、と輪島クンには返信した翌日、まだがら空きの電車にマスクをして乗って実家に帰った。電車の中で、琉聖さんに絶品ティラミスのお礼は送っておいた。
「おかえり、メグ」
家には母だけがいて、父と二人の兄はすでに道を挟んで広がるビニールハウスに行っている。
「炭酸水飲む?気分は悪くない?」
「飲む。大丈夫だよ」
「駅まで迎えに行くのに」
「少し歩く方が、電車がリセットされてちょうどいいの。今日、人がいないの?」
「午前中は二人、来てくれる」
「そっか。私は何から?聞いてる?」
「たぶん、出荷の方だと思うけどハウスで聞いてみて。収穫の方がいいならそれでもいいと思うし。どちらにしても来週が父の日っていうのもあって今日は忙しいわ」
「うん」
母の日や父の日に忙しいのはフラワーショップで、農家はその前が忙しい。
「じゃあ、いってきます」
「はい、いってらっしゃい。お昼は炊き込みご飯、作っておくからね」
「やった」
私は母から渡された保冷剤付きタオルを首に巻き、ドット柄の生地に細いリボンが可愛いアームカバーに手を通しながら
「おはよう、ただいま」
とメインのハウスに入って行った。
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