uno

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バッグの隣に片膝をつくように座っていた彼が私を見上げて 「ありがとう。使わせてもらいます」 と手を拭きながら立ち上がると、ガッツリと顔をタオルで覆う。ああぁぁ…その手…顔と手でタオルをサンドイッチにしている手が、コミックで描かれているような指の長い関節のセクシーな手でガン見すると、タオルを顔から離した彼とバチッと目があった。 「いい匂い」 「へっ?」 「タオル、いい匂い」 そう言いながら微笑んだ彼は、少し長めの襟足の髪を首ごと拭くようにガシガシと拭く。髪全体が濡れているのではないのは、ヘルメットを被っていたのだろうと予想出来て 「あの…宅急便で届くと思っていたんですけど…?」 どうして彼がバイクで届けに来たのかという疑問をぶつけた。 「そうしてるんですけど…ここ、うちから近いんですよ。バイクで15分ほどかな」 ネットで注文した時に、しっかりと住所なんて見ていなかったな… 「だから、前日に宅配業者にわざわざ預けて、倉庫で一泊してトラックに乗ってあちこち回ってから届くより、俺が届けられると思って。雨にはあいましたけど…」 タオルを首に掛けてしゃがんだ彼は、魅力的な手つきで保冷バッグを開けた。
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