4092人が本棚に入れています
本棚に追加
バッグの隣に片膝をつくように座っていた彼が私を見上げて
「ありがとう。使わせてもらいます」
と手を拭きながら立ち上がると、ガッツリと顔をタオルで覆う。ああぁぁ…その手…顔と手でタオルをサンドイッチにしている手が、コミックで描かれているような指の長い関節のセクシーな手でガン見すると、タオルを顔から離した彼とバチッと目があった。
「いい匂い」
「へっ?」
「タオル、いい匂い」
そう言いながら微笑んだ彼は、少し長めの襟足の髪を首ごと拭くようにガシガシと拭く。髪全体が濡れているのではないのは、ヘルメットを被っていたのだろうと予想出来て
「あの…宅急便で届くと思っていたんですけど…?」
どうして彼がバイクで届けに来たのかという疑問をぶつけた。
「そうしてるんですけど…ここ、うちから近いんですよ。バイクで15分ほどかな」
ネットで注文した時に、しっかりと住所なんて見ていなかったな…
「だから、前日に宅配業者にわざわざ預けて、倉庫で一泊してトラックに乗ってあちこち回ってから届くより、俺が届けられると思って。雨にはあいましたけど…」
タオルを首に掛けてしゃがんだ彼は、魅力的な手つきで保冷バッグを開けた。
最初のコメントを投稿しよう!