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幽霊は別たれる
考えたくありませんでした。
ですが、事実としてあるのです。
幽霊には転生があるのです。
幽霊界で与えられた体はあくまで仮のもの。
魂を入れるための本物の器が完成すれば
仮は必要なくなる。
僕は10年幽霊界に居ました。
10年の間に本物の器が完成してしまったみたいなのです。
本当の器が完成すれば、
幽霊界から転生先の世界への旅が、
また200年の旅が始まるのです。
もう一度200年の旅をして、
転生先で器に入るのです。
それが何を意味するか。
そう、彼女さんとのお別れです。
「いやです。」
「彼氏さん…………。」
「どうしてもいやです。」
みっともなく彼女さんに縋り付いてしまいました。
彼女さんはそんな僕を突き放すことなく抱きしめてくれました。
どうして僕たちが離れなければいけないんですか?
彼女さんにおはようを言えなくなるなんて
おやすみを言えなくなるなんて
風にたなびく黒髪を見れなくなるなんて
僕の思考が追い付かなくて
言葉は空気になって吐き出されるだけ。
あふれているのは
あるはずのない目からこぼれる涙だけ。
僕の嗚咽しか響かない。
「聞いてください、彼氏さん。」
僕が顔をあげると
のっぺらぼうの彼女さんから
まっすぐな視線が飛んできました。
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