15人が本棚に入れています
本棚に追加
『ご覧下さい、凄まじい人の数です!彼らは帝都ゲート前で差別反対のプラカードを掲げ…』
うじゃうじゃとその門の前に集る人々を写した無人航空機の映像に興奮気味な口調のアナウンサーは声を高くした。
数千、もしくは万はいっているかもしれないデモ隊の群れは、ネットワークの力を最大に引き出したと言える。心から帝国の在り方に疑問を呈している者、ただ面白そうだからと参加した者、デモ隊の美人主導者の追っかけ、…それらの知り合いに連れてこられただけの者。少ない警備隊は揉みくちゃにされ、応援を要請しているが駆り出されるのは地方の警察だけだ。騒ぎを沈静化させるにはブルドーザーが必要だろう。
『様々な地域から集まった王国系の人々が…』
「おい、レア、…マジでやんの?」
自信なさげに青年は問いかけた。その情けない表情に彼女は呆れたように肩を竦める。
「スカンク、あなたビビりすぎよ。こんなチャンス滅多にない。幹部全員一致で賛成だったじゃない」
「…そうだけどよ…。なんつーかこんなに集まるなんて思ってなくて」
狭い車内の中には沢山のモニターが浮いている。それらは様々な局の映像が流されているのだ。殆どがゲート前のデモの事ばかり、想像よりも多くの人間が集まった。
「それに他のみんなはもうコイツらに紛れ込んでる。それにもしここで中止にしたら聖女様がどれ程お怒りになるか…」
「分かってる、でもいくら警備が手薄だといっても一人も帝国警察がいない訳じゃねぇし。…後ろ盾一つ無くなったって聖女様が言ってたじゃねぇか」
スカンクは王国打倒委員会の一会員である。世間では過激派やカルトなどと言われているがそれは間違いでは無い。物は破壊し王国民は虐殺する、如何に王国民が愚かであるかを説く、その活動はまさに過激なカルト集団だ。
「…グズグズするな、あなたは最初の引き金を引かなきゃならないのよ。それとも他の人間にして貰う?」
「いや、それは俺がやる」
彼女から渡されたピストルをズボンのポケットに突っ込んで、スカンクは大きなサングラスとマスクを装着する。特徴的な髪の白い毛束を帽子に突っ込んでふうと大きな深呼吸。
「俺が合図するまで他の会員は大人しくさせておいてくれよ」
「…勿論、タイミングはあなたに委ねる。私も準備が終わったらそっちに行く」
意を決して車の外に出た。すると報道とさほど変わらぬ喧騒が少し遠くから聞こえてくる。風で靡く黄色のスカーフが赤色に染まることを承知でスカンクは一歩前に踏み出した。全ては自分の中にある鬱憤を晴らす為。

最初のコメントを投稿しよう!