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「まずは、色々な賞に挑戦してみて、ご自身の作風に合う賞や出版社を探してみてはいかがでしょうか」
彼女の手によって、封筒は僕の方へ滑ってくる。
「出版社や賞にもそれぞれの色がありまして。ターゲットとする年齢層ですとか、売りにしている内容ですとか。研究されると、ご自身の作風にも生きてくると思いますよ」
彼女は実にスムーズな口調で言葉を紡いだ。それがあまりにも滑らかだったために、僕はその大半を聞き逃してしまっていた。
ただ、これだけは分かった。
この作品には、いや――僕には、見込みがない。
「今まで、選評すらまともに貰ったことがなかったので……直接、ご意見を頂きたかったんです」
絞り出すように言った。完全に、負け惜しみだった。
すると、述岡さんは声色を変えて言った。
「そうですか。それでは、苦言を呈するようではありますが、少々アドバイスをしても宜しいですか?」
場面転換が激しすぎてついていけないだとか、一人称視点や三人称視点が混ざって分かりづらいだとか、主人公の言葉に説得力が足りないとか、心当たりがいくつも浮かぶ。
しかし、次の瞬間、彼女の口から放たれた言葉は、そのどれでもなかった。
「最近、この作品のアバターが現れたんじゃないですか?」
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