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episode1.芸術家とアバター
「今回は、ミステリー小説『匠の痣』で、昨年度の夏畑文庫新人賞大賞を受賞された、渡狼 頼斗さんにお越し頂いています。頼斗さんは、弱冠十九歳! これまでにも数々の小説賞を受賞されています。今日はそんな稀代の次世代作家にお話を――」
一日ベッドに横になっていたせいで、身体中が痛かった。
目が覚めて、何気なしに点けたテレビ番組のコーナーがこれだったというのは、僕への追い打ちだろうか。
机の上には、プロットのメモが未だに散らばったままだ。
昨日もまた、選考通過の連絡は来なかった。
「――『匠の痣』の主人公は、残酷な運命を背負っています。長年に渡る酷い虐待に耐えかね、ある日両親を殺害。それを事故として隠蔽します。その後探偵として名を上げ、殺人事件の犯人を鮮やかに摘発していきますが、その一方で、犯人たちの背景にも触れることになり、葛藤していき……。作り込まれた完全犯罪を解き明かす爽快感と、彼にのしかかる暗い闇に、もう心が行ったり来たり! 読んでいて凄く体力を削られました!」
アナウンサーの金切り声を聞き流しながら、僕はメモを集めると、両手でいっぺんに丸めた。
僕の夢は、小説家になることだった。そして今日、その夢を諦める。
「――それでは、『匠の痣』くんにもお話を聞いてみましょう!」
「あ、匠で大丈夫です。いつもそう呼んでるので」
「そうですか。匠くん、こんにちは!」
頼斗の隣には、探偵の恰好をした少年が佇んでいた。
「こんにちは」
「すごーい! 私、アバターとお話しするの初めてです!」
アナウンサーの興奮を前にしても、少年はどこか飄々としていた。
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