episode1.芸術家とアバター

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「綴!」  彼はまた、名前を呼んだ。 「もう一度ボクを書いてよ、ね? ボクの魅力が分からないやつなんてほっといてさ! ボクの魅力が分かるやつに向けて書こうよ!」  言いたいことは沢山あったけど、ぐっと飲み込んでから、一言呟いた。 「分かったよ、」 「え?」 「君の名前だ」 「名前って……ボクにはタイトルが」 「誰にも知られていない物語なんて、タイトルがないも同然だ。だから、君が認められる日が来るまで、君の名前は『拙作くん』だ」  拙作くんは、僕の言っていることが分からないのか、きょとんとした表情でいた。しかし、すぐに笑顔になって大きく頷いた。 「宜しくね! 綴!」  こうして、僕と僕の作品――通称・拙作くんとの生活が、静かに幕を上げた。
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