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アバターがいることで、確かに創作意欲は上がっている気がした。ただそれは、僕の中の問題でしかない。拙作くんは飽くまで、そこにいるだけだった。
「それで! 次はどうなるの!?」
僕がある程度の所まで書き上げると、彼は決まってそう尋ねてくる。自分から展開を提案してくることはない。
当然だ。意志があるとはいえ、彼は僕の思考から生まれた存在。僕が持っていないものを持っているわけがないのだ。
「寝て考える」
「えー!?」
「いつも言ってるだろ。君はまだ完成じゃないんだ。今考えてる結末とは違うものになるかもしれないし、今までの設定がそっくり変わるかもしれない」
「寝て考えた方が、いいアイデアが思い浮かぶってこと?」
「いいアイデアかどうか、決めるのは僕じゃないけど」
僕がベッドに横になると、拙作くんも同時に布団の中へ潜り込んできた。
「おやすみー!」
「……せま」
不思議な気持ちだった。
拙作くんは僕の作り出した、いわば幻影にすぎないのに、本当に生きているみたいだ。偉大なる芸術家たちも、最初は同じ気持ちだったのだろうか。
うとうとしては目が覚めるのを繰り返しているうちに、朝を迎えてしまっていた。起き上がると、僕のすぐ傍で眠る拙作くんが、贅沢に毛布に包まって、すやすや寝息を立てている。
まるで子供だ。身長だって、僕の腰くらいでしかない。多分、僕の作品がしっかりと仕上がっていないからだ。
何度も顔を洗い直したが、やっぱりベッドの上には、小さな身体が丸まっている。
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