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僕が用意したバナナヨーグルトを、拙作くんは、手の甲を上にして握ったスプーンで大きく掬い上げて、しげしげと見つめた。
「おっきー」
ヨーグルトを纏った、厚く切られたバナナは、スプーンの上で不安定にぐらついていた。
「落とす前に食べなよ」
「はーい」
大きく口を開けたのに、彼の口元には、入りきらなかったヨーグルトが付いた。もぐもぐとその頬が大きく上下する。
「綴は食べないの?」
「学食食べるからいい」
「大学? ボクも行く!」
その瞬間、食器が擦れる不快な音が響いた。それを掻き消そうと、僕は声を上げた。
「ダメだ!」
「なんで?」
立ち上がった拙作くんは、僕を見つめ首を傾げる。
「行儀悪いぞ! 食べ終わってから!」
流石に驚いたのか、拙作くんはそっと腰を下ろした。
「なんでよ、ボクは綴の相棒だよ?」
「君は、他の人にも見えるんだろ」
「うん!」
「……取り敢えず服着ないと」
真っ白で真ん丸の、漠然とした姿の拙作くんだが、流石に裸のままで連れ歩くわけにはいかない。
……大事なところまで具現化されなかったのは、僕の想像力が足りていなかったお陰だろうか。
「じゃー、今日はお留守番?」
「そう」
「服、買ってきてくれるの?」
「うん」
「ふふっ!」彼は口元を、小さな手で覆った。「楽しみだなあ! ボクに似合うの、買ってきてね!」
彼の口元についたヨーグルトまでもが、僕をからかっているように見えた。僕は傍にあったティッシュを掴みとり、乱暴に彼の口を拭った。
「むぐっ」
「行儀悪いってば」
「へへ、ありがとー、綴」
違う、僕はこんなのが書きたいんじゃない。
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