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1.賢い女で居てくれ
「愛、君はバカな女じゃないはずだ。分かるだろう? いつも賢く居てくれよ」
同棲中の婚約者、悟の口癖だ。彼は一流大学出身のエリートサラリーマン。私は二流女子大出身の平凡な女。それでも彼は、「賢い女で居てくれ」と口酸っぱく私に言う。だから、私はいつも賢いフリをして、賢い女を演じていた。サブスクの海外チャンネルで女弁護士や女医のドラマを見まくって、賢い女の振る舞いを勉強していた。
悟との出会いは合コンだった。一流商社のエリートサラリーマンと、地銀の行員の女性陣である私達との合コンだった。
私は、悟の見た目に一目ぼれした。百八十五センチの長身に、程よく筋肉の付いた身体。それでいて真面目そうなきりっとした顔の作りにグッと来たのだ。
悟の方も、私の控えめな態度に心打たれたとかで、合コンの終わりには連絡先を交換して、あれよあれよという間にお付き合いが始まって、二カ月後には同棲していた。そしてその半年後には、婚約をした。
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