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3.AIのやりくり講座
悟との生活では、生活費は半々で出し合っていた。私の給料は悟の半分程度だ。もう少し出してくれても良いんじゃないかしら? それに、悟は私に質の良いバランスの取れた食事と、常に部屋の中を清潔にしておく事を要求した。まだ結婚したわけでもないのに、私に完璧な家事を求めた。悟はちっとも手伝ってくれない。皿洗いはおろかゴミ出しすらしない。
「今月生活費がカツカツなの……ちょっと融通してくれないかしら?」
前に、そう悟に切り出した。悟の求める食卓を維持するためには、けっこうな額の費用が掛かってしまうのだ。
「何を言っているんだよ、愛。そこを上手くやりくりするのが主婦ってものだろう? 半年後には僕らは結婚するんだよ? 予行練習だと思ってきちんとやってくれないと困るよ。生活費が足りなくなるだなんて愚かな女のする事だ。賢く居てくれよ、愛」
そう、なじられた。結局生活費は追加で貰えなかった。だから、私はなけなしの貯金を崩す事にした。もしも私が一人暮らしだったら、ここまで高タンパク低カロリーにこだわらないし、疲れた時はコンビニ弁当で済ますだろう。
でも、悟は結婚したら私には専業主婦になる事を求めているし、きっと生活費をもっとくれるはずだわ。そうじゃなきゃ、こんな生活すぐに破綻してしまう。
「ハロー、ムーグル。上手な家計のやりくりの仕方を教えてくれ」
『はい、上手なやりくりの仕方ですね。まずは家計簿を……』
私はAIスピーカーの家計のやりくり講座を一通り聞かされた。
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