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03
異世界帰りの米蔵さん88才は今日も性懲りもなくお散歩中です。
お日様に照らされ近所の公園までの散歩道。歩きなれたその道も、いつも初めて通ったように新鮮に感じます。
今日はちょっと熱いかな?熱中症に気を付けてほしい。そんなことを思うような熱気。
ふと横を向く米蔵さん。なんと、通りに面したマンションが燃えているではありませんか。
米蔵さんの脳裏には。ファイヤードラゴンとの死闘が一瞬よぎりました。
しかし躊躇する理由はないのです。
『水球(ウォーターボール)』を三つ発動させます。
米蔵さんの手のひらから大きな水の球が飛び出し、その出火している窓に飛んでいきました。
米蔵さんは『水壁(ウォーターウォール)』で体の周りには水の壁が出現させ、『飛行(フライ)』を使い宙を舞います。
「待っておれ!今わしが、助けてやるからの!」
いつになく血圧の上がった米蔵は定期的に『水壁(ウォーターウォール)』に頭を突っ込み、潤いを感じながら宙に舞います。
向かうは先ほど出火していた窓。
そして飛び込んだその部屋には、逃げ遅れた母子が今にも炎に巻かれそうになっていたのです。
母や子を守るように抱きかかえます。
その母の愛情に、米蔵さんの中の熱い何かが高まるのを感じ、また『水壁(ウォーターウォール)』に頭を突っ込み冷静さをとりもどします。
『みずしぶき』を発動させると、大量の水のしぶきが室内の炎を全てかき消してくれました。
そしてその母子にそっと近づきいつも以上のイケてるボイスで囁く米蔵さん。
「もう、大丈夫ですよ。あなたの愛がこの炎に打ち勝ったのです。さあ、一緒に空の遊覧飛行としゃれ込みましょう」
そういって差し出した手を握る母。子供には触れさせないようにしっかりとガードしながらでした。
少しだけ悲しい目をした米蔵さんは『飛行(フライ)』を再び発動させると、無事その母子を外へと連れ出したのでした。
「あの、せめてお名前を・・・」
「ふっ。名乗る名前など・・・忘れてしまったよ」
「ああ・・・ありがとうございます!」
「おじいちゃん!ありがとう!」
母子の温かい言葉に包まれながら帰路を急ぐ米蔵さん。
どうやら今日の予定はあの熱い炎と、母子の愛に焼かれ、煙として消えてしまったようです。
その3時間後、スーパーで無事保護された米蔵さん。
今日もちゃんと温かい布団で眠ることができました。
めでたしめでたし。
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