ナプキンから始まる出会い

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「『若菜、いつも怒ってる顔してるように見える。』」 「『ウチと居るときだけは、笑ってよ。』」 「って……。」 目線を足元に置く。 「えっ……。」 アタシは絶句した。 「そんなこと普通言う?」 ソファーに座っているアナタに問いかける。 「うんん。」 首を振って否定をする。 「言わないよ!」 「だって、怒ってる顔だなんて、普通、言わないよ!」 「どんなに親しくても親しくなくても、怒ってる顔なんて言葉、絶対使わない!」 「もし、思ったとしても言ってはいけない言葉だよ!」 アナタの顔を見て、アナタの目を合わせて、アタシは力を込めて話した。 「ありがと。」 ほんの少し微笑む。 「その人、いつも仏頂面してたの。」 「ワタシが笑っても仏頂面ばかりで、何だか、ワタシまで笑うのが辛くなっちゃってね。」 「いつも、仏頂面して、ひどいことをワタシに言って。」 その時に、 「『あなたにそんなことを言われたくない。』って思ってしまったの。」 「でもね…、その人、何だか受け答えが変だったの。」 「変な受け答え?」 若菜の方を見つめる。 「そう。」 「変な受け答え。」 「例えば、ロッカーの扉を閉めるときに、立て付けが悪くて強く押さないと閉まらない扉ってあるでしょう。」 「うん。」 美喜は若菜の言葉に相槌を打つ。 「必要な物を取りにロッカーに向かったの。」 「それで、ロッカーの扉を強く押した。」 「すると、『ガチャン。』っと大きな音が教室に響いた。」 「そしたらね、こう言ってる言葉が耳に届いたの。」 「どんな、言葉?」 「『何あれ、性格悪いの?』 って……。」 「えっ…。」 「そんなことで、性格悪いだなんて…。」 「そんなこと、ひどすぎるよ。」 「ああいうロッカーって、静かに閉めても音が鳴っちゃう物なのに……。」 「若菜ちゃん……、」 「うん…。」 「だからね、その時にまだ友達だった人に、『こんなこと言われちゃったぁ。えへ。』」 「みたいなノリで言ったの。」 「そしたらね、『わざとじゃないんでしょ。』って言葉が発せられて。」 ワタシは、目線を足元に置く。 「ワタシが、その時、一番欲しかった言葉ではなかった……。」 「ただ、『そうだったの。』って相槌を打ってくれるだけでよかったのに…。」 「だから……、なんだかモヤモヤしちゃって心の中が……。」 「すごく、孤独を感じた。」 「教室に居場所が無いって思っていたけど、友達にも居場所が無いんだなって思ったとき、地球上でひとりぼっちな感覚がした。」 息を吐いた。 「今思うと、言葉の受け答えが変だったし、人の気持ち考えられない人だったし、発達障害じゃないかなって思うの。」 「それに、どうして、あんなに無理して一緒に居たのかなって思うの。」 「そんなに、『無理してまで一緒に居るのってそんなの友達じゃないよ。』 『ひとりでもいいんだよ。』って過去の高校生だった自分に言ってあげたいよ。」 フッと微笑んで、美喜ちゃんを見つめる。 ニコリと笑った美喜は、 『ピンポーン!』と家のチャイムが鳴って、デリバリーを受け取りに向かった。
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