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「あっー。いた!」
「やっと、会えた!」
あれからしばらく経ったある日の夜の駅。
声のする方に目をやる。
「あっ…。この間の。」
この間、トイレで会った人がこちらに向かってピョンピョン跳ねながら手を振っている。
軽い足取りでテンポよくジャンプするかのようにワタシの目の前にその人は現れた。
『フフッ。』
「こんばんは。」
「真宮 美喜(まみや みき)です。」
「やっと会えましたね。」
「この間のお礼がしたくて、ずっとここで待ってたんですよ~。」
弾けるような笑顔で、顔を見つめた。
「別に。お礼なんかいいよ。」
「たった一枚のナプキンごときで。」
その人を軽くあしらう。
「そんな言い方しないでくださいよ~。」
「あの時、本当に、助かったんですから~。」
「だから、これ。」
「借りちゃったから、返そうと思って。」
持っていた紙のバッグを広げた。
紙のバッグの中に、
ピンク色のパッケージのナプキンが一袋入っていた。
「いいよ。たった一枚なんだし。」
「それに、あれは貸したんじゃない。」
「あげたの。」
「だから、いいわよ。」
ワタシは、手を振って、歩き始める。
「これって、運命ですよ。」
「だって、同じメーカーのナプキン使ってたんですよ。」
「きっと、気が合いますよ~。」
崩さない笑顔で、隣に駆け寄った。
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