嫌われツンデレ少女の「恋する運命論」

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 三人での旅も早や四年近い歳月を数えた頃に、大きな変化があった。テラの活動を長年に渡って密かに応援してきたグランティスという国の王族の姫が、彼と結婚したのだ。帰りたい故郷を持たなかったテラにそういった居場所が出来たのは喜ばしいことであり、なおかつ姫君はテラに現在の仕事を続けて欲しいとも願っていた。テラの用事でその国へ立ち寄る機会が以前より増えた以外は、これまでと変わらぬ旅を続けることが出来る理想的な婚姻関係だった。 「ティサ、ただいま~」 「……さっき出たばかりでもう帰ってくるって、思ってなかったんだけど?」  ノアとテラは姫からの招待で、王宮へ呼ばれていた。ティサも同行する、というわけにはいかないのはやはり、ティサの暴言癖に因果がある。テラは、自分自身がティサに悪態をつかれても日々耐えているものの、自分の愛する女性にそれを向けられるとさすがに我慢が決壊してしまいそうなのだ。自分の日頃の行いが招いた結果なのでティサも納得の上、ふたりが王宮へ出かけている時はいつも、宿に残りひとりで留守番をしているのだった。 「テラは奥さんとふたりきりになりたそうだったから、先にお暇したんだ。ボク達もふたりでどこか遊びに行かない?」  テラは姫のところへ泊まるだろうし、ノアも夜まで帰らないだろうと踏んでいたティサは、人目がない前提で寛ぐための服選びをしていた。彼女ももう二十歳を超えて、少しでもノアに女性として意識して貰えるように気を付けつつあった。髪を長く伸ばしたし、子供の頃は絶対選ばなかったようなスカートを着てみたり……。 「……実は、あたし。今日、誕生日なの」 「……そう、なの?」  ノアは突然の打ち明け話に、目をぱちぱちと瞬かせている。四年も一緒に暮らしているのにティサがそれをノア達に教えなかったのには理由がある。もし、彼らが誕生日を知っていたら、その日に祝い事をしてくれただろうから。そんな時にもお決まりの、照れ隠しめいた暴言を放って、せっかくの晴れの日を嫌な一日にしてしまうかもしれない。容易に想像出来た。 「あたし、もうじゅうぶん、大人の体になったでしょ? そろそろノアの答えを聞きたい。あたしの気持ちは出会った頃からずっと変わらない。あたしは、あんただけの(もの)になりたい」  だから、今日という日のために残しておいたのだ。人生で最も大切な告白をする、運命の日のために。……それなのに。 「うん、いいよ。ティサがボクでいいって言うなら」  あまりにもあっさりとした調子で答えるものだから、ティサは思わず膝から力が抜けて絨毯の上にずっこけた。
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