夏の迷子

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 「あーちゃんって面白いよね。あんた、最高だわ。友達になろうよ」  「うん! なろう!」  みーこは、「じゃあ友達ってことで」と言いながら、顔の前でピースサインをして話を続けた。  「もう友達だし、今度こっちに遊びにおいでよ」  「こっちって?」  「私の住んでる場所。トランプもあるし、テレビゲームもあるし、動画も見放題だよ。あーちゃんも、きっと楽しいと思う。なかなか友達来てくれなくて寂しいんだよね」  「最高じゃん。行く行く! じゃあ、連絡先交換しようよ」  「おっけ~!」  みーこはテーブルの上に置いてあった油性マジックを取り、私の手を掴んだ。  「紙もスマートフォンも無いからさ、掌に書いちゃうわ」  みーこは右の口角を上げながら、私の右の掌に電話番号を書き記す。  「この番号にかけたら、いつでもこっちに来られるから。待ってるね! これからよろしくー!」  「わっ。くすぐったい!」  油性マジックの感触に私は笑い転げた。  そうして、水しぶきをあげながら足湯でちゃぷちゃぷと遊んだあと、みーこは「やばい! トイレ漏れる!」と大声で叫びながら足を拭き、お手洗いに走って行った。  人がお手洗いに行くと、自分も行きたくなるのはどうしてだろう。  「ごめんごめん。トイレ混んでて。ただいま」  みーこがお手洗いから帰って来るのを待って、私も入れ違いでお手洗いへ向かった。  「私もお手洗い行ってくる。ちょっと待ってて」
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