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ヴァイス様は白髪ロングの、優しい表情をしたお兄さん的な男性である。
ドゥンケルの中では1番社交的で、普段から市民と関わるのは熱血系団長である赤髪のロットさんとヴァイス様の2人だけだ。
いつもニコニコしていて市民からも支持されており、柔和な態度からご老人からも好かれ、ファンサービスも沢山する。優しい優しいアイドル、という感じだ。
それ故に団員内で「あいつは本当に騎士だったのか」「弱そう」などと言われている。それをヴァイス様はいつも否定せずに「そうだね。実は僕は臆病だから戦場に出たことがないんだ」と笑う。
だけど、ヴァイス様には裏の顔がある。騎士だった頃は最強の騎士と呼ばれ、誰もが恐れていた。だけど単体行動が多く、戦場に出ても瞬く間に敵を斬り刻んでどこかに行ってしまうため、ヴァイス様の顔を知る者はほとんど居ない。
その上、目立つ白色の髪は返り血でいつも真っ赤に染まっていた。
何者かわからないけれど、最強で恐ろしい真っ赤な騎士。いつからかヴァイス様は『真っ赤な悪魔』と呼ばれるようになった。
だけどその悪魔のような騎士は、1人の騎士に斬撃を止められ、手間取っているうちに守るべき対象であった国王を失ったことで「俺はまた、守れなかった」という言葉を残して姿を消してしまう。
市民の安全や自分の為ではなく、ただ守るべき対象であった国王を守る事だけが、全てが不明とされていた真っ赤な悪魔の騎士、ヴァイス様の唯一の糧だった。
そして今は過去を隠し、ドゥンケルの団員として活躍している。
って、最高じゃないですか!?
と、帰宅後のベッドの上で先程供給されたばかりのヴァイス様のイラスト──否、宗教画を崇拝しながら思う。
いつも優しいお兄さんなのに、実はめちゃくちゃ強いとかギャップ萌えしかない。その上「俺はまた、守れなかった」と力無なく呟いた声に、心を持っていかれた。
心臓をガッと掴まれた。思い切り、強く。
真っ赤な悪魔のヴァイス様が「その心臓を俺に寄越せ」とでも言っているみたいに。私なんぞの心臓で良ければいくらでもどうぞ!
だけど、この事を誰にも言ったことがない。ツブヤイターに友達は1人いるけれど、現実にはいない。
本当は現実にも同じ趣味の友達が欲しいという気持ちはあるけれど──私には友達を作る勇気も、探す勇気も、ない。
「ヴァイス様、イケメン・・・・・・」
今日もまた、こうして1人で推しへの愛を呟くことしか出来ない。
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