俺と三瀬川の番人と

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 気がつくと、気持ちの良い花畑を歩いていた。風もないのに黄色やピンクの可愛らしい花々が揺れていた。揺れるたびに甘やかな匂いがして心が落ち着いていく。  自分の意思などなく、とにかく歩きたかった。 「付いて来るなよ、オッサン!」  いい気分で歩いているのに、後ろから俺を暴走トラックの運転手がブツブツ言いながら付いてくる。 「そう言われても……足がこっちにな?」  死んで開き直ったのか、オッサンは馴れ馴れしく近寄って俺の隣を歩き出し、話しかけてくる。 「あんた、名前は?俺は木下武男(きのしたたけお)。仲間からはタケやんって呼ばれてる」 「お前っ!よくもヌケヌケと!お前のせいで俺は死んだんだぞ!まだ27歳だぞ!」  俺に胸ぐらを掴まれても、されるがままにヘラヘラしている人殺し。しかも、かなり酒臭いじゃないか。 「飲酒運転かよっ!ふざけんな!」 「まぁまぁ兄ちゃん、俺等の仕事は過酷なんだよ。エネルギーを入れないとやってられない日もあるんだな~これが」  俺は初めて人を殴ろうとした。振りかぶった拳は誰かに掴まれてしまったけど。 「ストップ!お二人さん。喧嘩してる暇はないよ?あ、ようこそ三途の川へ」  現れたその人はかなりパンクな兄ちゃんで、年齢不詳、耳と鼻に輝く赤いピアス、髪はシルバーのツンツンヘアーだ。 「内川真吾(うちかわしんご)だな?よーしよしよし、怖かっただろう?痛かったか?寒かったか?無事に三途の川に辿り着いて偉いな」  やけに馴れ馴れしい。
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