奥平柊、の話

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初体験ーーばかりだな、今日は。 仕事であんな風に入賞(ひょうか)されたのも初めてだし。 自分の人生で、好きな男に、こんなことされる日がくるなんて思ってなかったし。 「………ぅ、……」 「……いいだろ?俺はお前にされたとき、ちょっと常識変わった」 「………っ、………出そう」 ピチャッと佐倉はわざとらしく舌を絡める。 ……こいつ、本当に抵抗ないのか? 男の……コレ、咥えてんだぞ? 俺は、奴の頭に手をやりながらもぞもぞと腰を動かした。 「先走りがすげぇ」 「……だから、出そう、だって」 「まだ我慢しろよ。……俺が舐めてんだから。もっとよさそうに喘いだら?」 「………っぁ、さくら………」 目を閉じると、卑猥な音が頭に響く。 自分が出している音だと認識すると、身体がバカみたいに体温を上げた。 佐倉はなかなか舌を離さない。 俺の先端から溢れる液を、上手に受け止めるように舌ですくう。 「……どこで、……覚えたんだよ、……ん、」 「さあ……そんなことより、どうだよ。……気持ちいい?」 「………うん。……イイ」 下半身が重くなる。 俺を旨そうに咥えてる佐倉を見てたら、身体がゾクゾクッと震えた。 「………んぐっ!」 「ーーーん、っ、……!」 「ん、ん」 「佐倉、あ、っ……!ごめん、止まらな……」 ズクン、とそこが震えて射精感にみまわれる。ーーヤバい。止まらない。 「は、離せ、佐倉!」 「う、ん、んん~~っ」 「バ………っ!」 ガッ!と俺は急いで奴を剥がすように離した。 「………!」 ぬめった液体がパタパタと布団の上に落ちる。 「は………ぁ、は、佐倉、お前な、」 「……はは。この前の仕返し、やっとできたぜ」 「アホか………そんなベタベタな顔で言われても恥ずかしいだけだろ」 うるせー、と言いながら佐倉は立ち上がり、デスクチェアにあったティッシュをとりにいく。 俺は上がる息を整えきれなくて、その様子をベッドから見ていた。 「……つーか、洗面所、行ってこいよ。……シャツがやべーから……」 「え?……うわ、マジかよ!」 「……だからごめんって………」 「まあ………別にいいわ。明日休みだし」 佐倉はシャツを脱ぎながら笑って言った。 ……どこか満足そうに。 「……佐倉」 「あー?」 「………ありがとな」 ぽつり、と小さく。 そう言った俺のセリフを、佐倉はその耳で拾う。 「強引にやったつもりなのに、礼言われてもな」 「……お前はいいのか?」 「見るなよ、バカ。今日はいいの。……お前の入賞祝いだからっ!」 バサッと汚れたシャツやズボンを投げられた。 視界が塞がった合間に、佐倉は浴室に姿を消す。 「………入賞祝い?」 ーーって、これが? 俺は、佐倉の服をぎゅっと握りながら、小さく笑った。 やがてシャワーの音が聞こえてくる。 お祝い(それ)がしたかったのか。だからって急にこんな……大胆なことする奴。 「わかりずらいっつの……」 だけど。 それを嬉しいと思ってしまう俺も、ただの単純な男だ。
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