あの日のミルキーウェイ

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 健太は茂みの方を向くと、ぴゅー、と指笛を鳴らす。すると、何かがモゾモゾと動いた。それは茂みをかき分け近づいてきて、ついに私たちの目の前に姿を現した。 「た、たぬき?」 「そうだ。こいつはたぬきのポン吉だ。クラスで飼ってるんだ。勝手にだけどな」健太はポン吉の頭を撫でていう。「余った給食とかやってるんだ。そしたらこんなに懐いちゃって、今や我がクラスのマスコットだ」  もふもふしたポン吉は、なんというか愛らしい。ああ、触りたい。 「ね、ねぇ、僕も撫でていい?」 「おう、いいぞ」  健太は許可してくれたけど、ポン吉はそうではなかったようで、私が近づくとそそくさと茂みの中へと逃げてしまった。 「あー、あいつ人見知りだから。許してやってよ」 「…………」  せっかくのもふもふチャンスが……。  がっくりと肩を落とした私を見かねてか、健太は仕切り直しと言わんばかりに声を上げた。 「よし、じゃあ次!」  * * * *  小学校を後にした私たちは学校の裏に広がる森に移動した。鬱蒼とした自然度高めの森を見るのは初めてだ。こんなに日が高いのに、森の奥の方は薄暗い。
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