あの日のミルキーウェイ

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 虫とかいるのかなぁ。都会っ子の私は昆虫の類が大っ嫌いだ。あんなの触れる奴の気がしれない。 「ここが学校裏の森だ。俺たち地元の子供は『おばけ森』と呼んでいる」 「おばけ森?」  なんだか不気味な名前だ。私は虫も嫌いだがお化けも大っ嫌いだ。遊園地に行っても絶対にお化け屋敷には入らない。お金を払って怖い思いをするなんて馬鹿げている。 「どうしてそんな恐ろしい名前で呼ばれているの?」 「ああ、それはな……」と健太は声を低くする。「この森にはおばけが出るからだ。夜になるとどこからともなく声が聞こえてくるんだ。『タスケテ〜』って」 「うっそだー。それ、普通に助けを求めている人だったんじゃないの?」 「マジだって、昔確認した奴がいたんだって。声の方を。するとぴたりと声が止んだ。それで帰ろうとすると、また『タスケテ〜』」 「も、もうやめてよ! 信じるからさ」  怯える私に健太はさらにおどろおどろしく話し続ける。 「この話にはまだ続きがあるんだ。怖くなって逃げ出したそいつが森の出口に差し掛かった時、背後から全身血まみれの女のオバケが追いかけて来たんだって。それ以降、そいつは行方不明になった」
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