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ん? なんかおかしくないか?
「…………」
「ははは。どうしたんだ、マルちゃん。東京のお坊っちゃんには刺激が強すぎたかな?」
無言になった私を恐れをなしたと思ったのか、健太がからかうように言う。しかし私はその怪談の穴に気がついていた。
「健太くん、その人が行方不明になったということは、その話は誰から聞いたの?」
「……あ」健太ははっとして頭を抱えた。「本当だ! 初めの奴は誰から聞いたんだ? これめっちゃホラーじゃない⁉︎」
なぜ作り話だという結論に至らないのか。もしかして彼は単純というより天然なのではないだろうか。
それからも健太プレゼンツ地元紹介ツアーは続いた。
いつもおやつを買う駄菓子屋、ザリガニが釣れる池、クワガタが取れる木などなど八割方、私が苦手とするものだった。
「あれ、健太じゃん。何してんのこんなところで」
サワガニが取れる小川を散策していた時である。そう健太に声をかけてきた人がいた。
振り返るとそこには女子高生が立っていた。
「あ、姉ちゃん。夏期講習終わったんだ」
「そうだけど、その子誰?」
「こいつはあれだよ、おじさんちの──」
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