勇者の決意

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勇者の決意

 僕は独りぼっちだ。  目の前ではドラゴンが、けたたましく鳴いている。  舞い上がる火の粉が、チリチリと頬を掠めた。  仲間はみんなコイツにやられてしまった。  回復の薬もない。  たった一人で、やれるかな?   ちがう、やるしかないんだ。  だって僕は、勇者だから。  にぎった剣がまばゆい光を放つ。  僕はドラゴンめがけて走り出した。 「うおおぉぉ‼︎」 「こらっ! ゲームは禁止って言ったでしょう!」  プツンと電源が切られたかと思うと、僕の冒険は強制終了させられた。  最強の勇者は、小学五年生の(あそび) 勇悟(ゆうご)に戻ってしまう。 「母さん! そんな、あんまりだ」 「ダメなものはダメ。が解決するまでは、ゲームはぜんぶ禁止だからね」  母さんは小さくため息をつくと、キッチンに戻った。  僕は一人、真っ暗なテレビ画面とにらめっこ。 「そんなのアリかよ……」  事件っていうのは、最近この町で起きている謎の現象のこと。  ある日突然、たましいを抜かれたようにぼーっとしたり、逆にこうげき的になったりする。通称、ゾンビ事件。  大人も子どもも、動物だってゾンビになる。どうしてなるのか、どうしたら元に戻るのか。誰も知らない。  大人はゲームやインターネットが悪いんじゃないかって決めつけてる。母さんもその一人だ。  犬や猫だってゾンビ化するって言っても、聞いちゃくれないんだから。  原因もわからないが解決するまでなんて。  それまでずーっと、ゲームができないなんて……  それこそゾンビになっちゃうよ! 「こうなったら、僕が事件を解決してみせる……!」  僕は勇者の剣あらため、コントローラーを強くにぎりしめながら決意した。  
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