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宙の街
「それで、どうやったら災いを祓えるのよ」
「よくぞ聞いてくれました。実は今、この町は半分ゲームになっているんだ」
「ゲームっ⁉︎」
条件反射のように、その言葉に飛びつく。
「そっ、ゲーム。そして災いはバグとしてこの町に巣食っている。君たちにはこのバグを消していってほしい」
「消すって、どーすりゃいいんだ?」
「簡単さ。ゲームをプレイして、クリアすればいい☆」
「ゲームをプレイ⁉︎ クリア⁉︎」
「ちょっとユーゴ、落ち着きなさい」
指原さんに叱られて、シュンとする。
事件のせいでゲームを禁止されたのに、まさかこんな形でゲームができるなんて思ってもみなかった。
「へ〜楽しそうじゃん! 格闘ゲームならちょちょいのちょいだゼ!」
「大事なのはそこだ、一体どんなゲームなんだ?」
本庄君が尋ねる。
どうやら、あきらめて付き合ってくれるみたいだ。
「それはね〜」
ホープはイタズラっぽく笑うと、パチンと右手の指を鳴らした。
次の瞬間、橋の下にいたはずの僕たちは、閑静な住宅街に移動していた。
こ、これが瞬間移動! 本当にゲームの中に入ったみたいだ‼︎
夢のような体験に、興奮を隠しきれない。
住宅街は、ブロック塀が迷路のように続いている。
前は犬の散歩をするおじいちゃんとか、おしゃべりを楽しむおばさんたちがいたんだけど。
ゾンビ化が怖くて、最近はだれも出歩かない。
「びっくりするじゃない、ちゃんと説明してよね!」
「あっはは! 口で言うより、やっちゃった方がはやいと思ってね〜」
ホープがまた指を鳴らす。
パチンッ
見なれた住宅街がみるみる姿を変えていく。
道路はタイル張りの床に。ブロック塀は真っ白な壁に。
「おい、みんな! 上見てみろよ!」
言われた通りに空を見上げる。
「……わぁ」
そこにさっきまでの青い空はなくて、何千もの星がかがやく宇宙が広がっていた。
吸い込まれそうな黒い海に、キラキラと光る星。
瞬きをしている間にも、流れ星がしゅんしゅんと流れていく。
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