宙の街

1/8
前へ
/56ページ
次へ

宙の街

「それで、どうやったら災いを祓えるのよ」 「よくぞ聞いてくれました。実は今、この町は半分ゲームになっているんだ」 「ゲームっ⁉︎」  条件反射のように、その言葉に飛びつく。 「そっ、ゲーム。そして災いはバグとしてこの町に巣食っている。君たちにはこのバグを消していってほしい」 「消すって、どーすりゃいいんだ?」 「簡単さ。ゲームをプレイして、クリアすればいい☆」 「ゲームをプレイ⁉︎ クリア⁉︎」 「ちょっとユーゴ、落ち着きなさい」  指原さんに叱られて、シュンとする。  事件のせいでゲームを禁止されたのに、まさかこんな形でゲームができるなんて思ってもみなかった。 「へ〜楽しそうじゃん! 格闘ゲームならちょちょいのちょいだゼ!」 「大事なのはそこだ、一体どんなゲームなんだ?」  本庄君が尋ねる。  どうやら、あきらめて付き合ってくれるみたいだ。 「それはね〜」  ホープはイタズラっぽく笑うと、パチンと右手の指を鳴らした。  次の瞬間、橋の下にいたはずの僕たちは、閑静な住宅街に移動していた。  こ、これが瞬間移動! 本当にゲームの中に入ったみたいだ‼︎   夢のような体験に、興奮を隠しきれない。  住宅街は、ブロック塀が迷路のように続いている。  前は犬の散歩をするおじいちゃんとか、おしゃべりを楽しむおばさんたちがいたんだけど。  ゾンビ化が怖くて、最近はだれも出歩かない。 「びっくりするじゃない、ちゃんと説明してよね!」 「あっはは! 口で言うより、やっちゃった方がはやいと思ってね〜」  ホープがまた指を鳴らす。  パチンッ  見なれた住宅街がみるみる姿を変えていく。  道路はタイル張りの床に。ブロック塀は真っ白な壁に。 「おい、みんな! 上見てみろよ!」  言われた通りに空を見上げる。 「……わぁ」  そこにさっきまでの青い空はなくて、何千もの星がかがやく宇宙(そら)が広がっていた。  吸い込まれそうな黒い海に、キラキラと光る星。  瞬きをしている間にも、流れ星がしゅんしゅんと流れていく。
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加