知恵の橋

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  ◇ ◇ ◇  ホープがステッキを振ると、荒々しい海は元の川に戻った。橋の下の三人は、ヨロヨロとこちらへ上ってくる。  水竜から黒い影が飛び出すと、それはホープの手のひらに集まった。  水竜の正体は、真っ白なニシキヘビだった。  ––––ペットのニシキヘビが脱走、ゾンビ化の恐れあり  あれ、これって、確か新聞に…… 「うどんちゃん⁉︎ やっと見つけたぁ!」  橋の入り口には、半泣きのオジサンが立っていた。きっとあのヘビの飼い主だろう。  ゾンビ化した生き物は、こんなにも狂暴になるのか。 「はい、クリア報酬♪」 「びっっっ⁉︎ ……くりさせるなよ」  いつの間にか真後ろに立っていたホープから、ビン底メガネを受け取る。 【装備 GET!】 【防御力+25】  着けてみるが、まったく前が見えなかった。  こんなもので本当に防御力が上がるのか?  クリア報酬、か。  なんとか正解できた。でも、全部ユーゴのお陰だ。  あいつの力がなければ、ボクは…… 「ちゃらん♪」 「は?」 「問題です。貝は貝でも、ざんねんな貝ってな~んだ?」 「不正(かい)」 「ブッブ~! ざんね~ん、不正解」  ややこしいな、と心の中で文句を垂れる。  ホープはケラケラ笑うとボクの頭にポンと手を置いた。 「答えは、だよ」 「こう、かい……」  視界の端に、ヘロヘロの三人組が見える。  ユーゴは、柄にもない大声を出して疲れ果てているようだ。  ––––もしやり直せたとしても、僕は同じ選択をするよ  正解、不正解じゃない。  ユーゴは、後悔のない選択をしたんだ。  ポン、と背中を押された。  大きな、大人の手で。 「人生は、一度きりだよ」 「……わかってる」  振り返らずに、まっすぐ走った。   ◇ ◇ ◇
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