調べの坂

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 タイミングよく、曲が少し落ち着いた。話しながら避けられる程度だ。 「おいユーゴ、そりゃねえよ」 「あ、足手まといなのはわかってる、けど––––」 「そうじゃない。勝つためにリタイアしてほしいんだ」  そう、このままじゃ僕たちは確実にゲームオーバーになる。  クリアするためには、が必要なんだ。  ゲームより僕が上手く動けない理由、それは視点だ。  ゲームの時は流れる攻撃を上から見る。でも今は、下から攻撃を見上げている。だから距離感がつかめないんだ。 「……ってこと。加えて今は、お互いの動きにも注意しないといけない。だから、指原さん。上から僕たちに指示を出してほしいんだ」 「指示っ⁉︎ だ、だめよそんなの!」 「え?」  指原さんは気まずそうに「あ、その……」と言葉をにごす。  こんな時にまで隠し事? ちょっとそんな余裕はないんだけどな。 「ユーゴがやりなよ、あたしには指示なんて……」 「僕はライフ二つ残ってるし。それに、これは指原さんにしかできないよ」 「おー! ミノリならダイジョブだろ!」 「そんなこと……」  指原さんはまだなにか悩んでいるみたいだ。  このまま三人でワチャワチャしていても、あっという間にゲームオーバーだ。はやく、はやく決めてくれ。  その時、彼女の目の前に青色の音符が。  僕はとっさに腕を引っ張った。思ったより強く引いてしまったようで、彼女はポスンと僕の胸の中におさまる。 「指原さん、お願い。今すぐ決めて」 「わわわ、わかった! やるから、離してぇ‼︎」 「え? ああ、ごめん」  パッと手を離すと、指原さんは磁石が反発するみたいにビュンと飛んでいく。  なんだ、まだまだ元気じゃないか。 「こ、こほん! もうすぐ激しい連符がくるから、その前に上に行くわ。あんたたち、頑張ってよね!」 「まかせとけぃ!」 「ありがとう、指原さん」 「ふ、ふん!」  指原さんはわざと音符にぶつかり、チヒロと同じ檻の中へ移動した。  残りは一分半といったところか。  絶対に、避け切ってやる。
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