調べの坂

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 指原さんからの合図がない。  おかしい、上でアクシデントでもあったのかな。でも、大筋君が呼びかけると、返事がきた。  よかった、これでなんとか……  安心したのも束の間、巨人が大きく右手を上げる。    ダーーーーン!!!  ラストスパートと言わんばかりに、無数の音符が降ってくる!  こんなの本当に避け切れるのか⁉︎ 「二人とも右にジャンプ! 二秒数えたら真ん中に寄って!」  左に避けようと思っていたけど、指原さんの言葉通りに右にジャンプする。  すると、左側に音符の雨が。  もし左に避けていたら…… 「今よ、真ん中に!」 「オッケー、ミノリ! ナイスすぎ!」  指原さんの指示はカンペキだった。  この曲を知っている彼女だからこそ、攻撃の流れを予測できる。  そして、降ってくる音符に気をつけながら、僕と大筋君の立ち位置も把握してくれる。  思ったとおりだ。  しかし、いくら指示がカンペキでも、イレギュラーは発生する。 【MISS!】  大筋君が、右と左を間違えて当たる。 【MISS!】  僕が、落としたアクセサリーを踏んづけて転ぶ。  だからジャマだったんだ、こんなジャラジャラ!  残りライフは、二つ…… 「右から左に連符! これで最後よ、走って!」  言われた通りに猛ダッシュ。大筋君の方が僕の先を走る。  すぐ後ろを、七色の連符がかすめていく。  これで最後、やった、ゲームクリ––––  ダダーーーーーン!!! 「なっ、アレンジ⁉︎ 右よ! お願い、右に戻って‼︎」  僕は坂を見上げる。  横一列に並んだ音符が降ってくる。右端に一つだけ、スペースがあった。  そんなのアリかよ……  連符を避けるために、僕たちは右から左へ走ったばかり。ここから右端に逃げるなんて、無理だ。間に合わない。  でも……   それでも!  僕はとっさに腕を伸ばした。掴んだのは、前を走る大筋君のジーンズベスト。 「うぉ⁉︎」 「いっけぇぇ!」  最後の力を振りしぼり、僕は身体をぐるんと回した。砲丸投げのように、大筋君を右へ投げ飛ばす。  僕はもう走れない。だからお願いだ、間に合ってくれ。 「ユーゴ⁉︎」 「いいから! 走って!」 「……おう!」  音符はもう目と鼻の先だ。七色の光が目にまぶしい。  大筋君は野球選手みたいなヘッドスライディングで飛び込んだ。  ギリギリで間に合わなかった、一ゲーム目を思い出す。  七色の音符の壁が、僕の身体を包みこむ。  結果は……  
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