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ゴーゴーという風の音がうるさい。
巻きあがった埃がチリリと頬を掠める。
(な、なに⁉︎ なにが起こったんだ⁉︎)
驚いて声も出せない。
周りもよく見えないけど、近くで指原さんの悲鳴が聞こえた気がする。
「閉めろぉ!」
「え⁉︎」
大筋君の声がして、そっちに薄目を開ける。
ぼんやりと三人の輪郭が見える。
「フタだ! フタを閉めろぉ!」
「フタ⁉︎」
とっさに手に持ったゲーム機を見る。
どうして気づかなかったんだろう。竜巻はゲーム機の画面から出ていた。
(どういうことだ⁉︎)
考えているヒマもないので、急いでフタを閉めようとする。
が、風のいきおいに負けてゲーム機を床に落としてしまった。
「くっそ! 俺様がやる!」
「ちょっと、タケルが動いたらあたしたち飛んでっちゃうじゃない!」
よく見ると本庄君と指原さんは、背の大きい大筋君にしがみ付いているようだ。
「チヒロ! 箱の中身が全部出たら、どうなるのよ!」
「あ、あれは神話の中のことであって、今そんな話をする因果的関係は––––」
「いいからはやく言いなさいよ‼︎」
「は、箱の中身は全部出ていないんだ。パンドラが焦って箱を閉じたら、そしたら……」
「そしたら、なによ~⁉︎」
神話ってなんだ、箱ってなんだ?
話を聞き流していたのでチンプンカンプンだった。
とにかく、僕がやるしかない。僕が……
勇気を振りしぼって、もう一度ゲーム機に近づこうと一歩を踏み出した。
その時……
とりわけ強い風が吹いて、ゲーム機の中から黒い影が現れた。
どんどん大きくなった影が、バシンッと地面を叩きつける。それはまるで、人の腕みたいだ。
もう一つ影が生えてきて、また、バシンッ!
二本の腕は、グググっと力を入れるように折れ曲がる。
画面の中から、なにかが出ようとしている。
(だ、だめだ。これを外に出しちゃ)
そう思うのに、身体が言うことをきかない。
足が震えて、今にも気絶してしまいそうだ。
「ああぁぁ、悪魔! 悪魔が出るわ!」
「やべぇ、やべぇって!」
「……ち、ちがう。もし、神話の通りなら、あれは……」
黒い影は、もうほとんどゲーム機から出てしまっている。
ど、どうしよう。
もう、終わりだ……
「あれは、希望だ」
「「「へ?」」」
「マーーーーヴェラス!!!!」
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